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- 国・地域名:
- ロシア
- 元記事の言語:
- 英語
- 公開機関:
- ロシア大統領府
- 元記事公開日:
- 2020/05/14
- 抄訳記事公開日:
- 2020/09/01
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ロシアにおける遺伝子技術開発に関する会合
- 本文:
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2020年5月14日付ロシア大統領府の標記発表によると、プーチン大統領はロシアにおける遺伝子技術開発に関するビデオ会議の議長を務めた。会議に参加したのは、Tatyana Golikova 副首相、Andrei Fursenko 大統領補佐官、Valery Falkov 科学・高等教育大臣、クルチャトフ研究所国立研究センター所長の Alexander Blagov 氏、ロシア科学アカデミーのエンゲルハート分子生物学研究所長の Alexander Makarov 氏、国立ウイルス学・生物工学研究センター(VECTOR)所長の Rinat Maksyutov 氏、バイオテクノロジー企業 Biocad 社長の Dmitry Morozov 氏、Rosneft 社CEO の Igor Sechin 氏らである。
● 会議冒頭でプーチン大統領は概略次のように述べている。
2019年4月、我々はロシアで遺伝子技術開発のプログラムを立ち上げた。今回は、過去12か月間の進捗状況を確認する。また、特に現在直面している課題を考慮しながら、さらなるステップについて議論する。
ロシアは、深刻な病気の予防と治療、平均余命の延長、環境の改善、土壌、水、空気の浄化、バイオ燃料の使用について、幅広い研究を行う必要があり、それが遺伝子技術研究の主目的である。言い換えれば、医学や農業から製造やエネルギーに至るまで、遺伝子技術が巨大な機会を提供するあらゆる分野について言及しているのである。
ロシアは、自国の利益、自国民の利益のためにそれらを活用し、ロシア独自の研究と技術の潜在能力を開発・構築する必要がある。我々の目標の規模、必要とされるブレークスルーの取り組み、それらの国にとっての重要性に関して言えば、遺伝子技術プログラムは、20世紀の核や宇宙探査のプロジェクトに匹敵する。プログラムの運営システムと組織をこの高い目標に合わせて調整する必要がある。そうすることで、基礎を築くだけでなく、得られた成果を遅滞なく実際の結果、つまり、(ロシアだけでなく世界中で)競争力のある技術や製品に変えることができる。
上記理由により、国家科学プロジェクトの下に、3箇所の世界規模のゲノムセンターが設立される。それらのゲノムセンターはそれぞれ、ノボシビルスクからクリミアに及ぶ研究機関や大学、さらには製造・イノベーション企業のコンソーシアムを構成する。また、Rosneft 社は我々の主要な技術的パートナーとなっている。
● Tatyana Golikova 副首相は3箇所の世界規模ゲノムセンターについて次のように説明している。
これら3箇所のゲノムセンターは、本プログラムの主要4領域であるバイオセキュリティ、医療、農業、工業に重点を置いている。主導機関はクルチャトフ研究所である。本プログラムの運営・実施は、特別に設置された評議会が当たる。評議会は、連邦当局、科学アカデミー、研究財団の各代表のほか、ロシアの指導的遺伝学者やロシアの産業パートナーの代表で構成されている。
第1のゲノムセンターは、ロスポトレブナゾール(Rospotrebnadzor)の応用微生物学・バイオテクノロジー研究センターに設置されたバイオセキュリティ・センターで、ロスポトレブナゾールの他の2機関と一体化される。このセンターでは、2019年後半から2020年初頭にかけて、感染症の革新的な医薬品創出目的で臨床分離株と検査基準菌株の電子カタログを作成し、2,000以上の細菌株をスクリーニングし、生物学的セキュリティ目的の病原性微生物と生物毒素の全国インタラクティブ・カタログの編集を開始した。
第2は、その親組織であるエンゲルハート分子生物学研究所を拠点とする医療遺伝子技術センターである。ここでは、次世代医薬品や生物医学細胞製品の開発について、さまざまな研究が行われている。腫瘍溶解性ウイルスの最初の亜種がここに集められた。これらは腫瘍細胞を選択的に殺す改変ウイルスである。
第3のセンターは、親組織であるクルチャトフ研究所で設立され、農業と産業微生物学で活動している。2019年に、このセンターでは、農業で家畜の飼料添加物として使用される代謝産物と酵素を生産する細菌の菌株を作成し、農業で有望なさまざまなアミノ酸を生産する細菌のゲノムを改変した。
● 今回の議論の締めくくりに当たり、プーチン大統領は遺伝子技術の重要な領域における共同取り組みを発展させるべく、次のような提案をしている。
第1点は、ロシアの大学の学生や卒業生、さらには若手研究者には、遺伝学の分野で最高の知識を得て、新しいスキルを身につける機会がなければならないことである。したがって、遺伝子技術の急速な発展を考慮すると、我々は最新の教育システムを構築する必要がある。教育制度は完全に維持する必要があるが、進行中の教育プログラムの更新プロセスも確実に実行する必要がある。この方向に向けた主要な一歩が、Rosneft 社とモスクワ国立大学で立ち上げたゲノミクスと人の健康に関する修士課程プログラムである。
第2に重要なことで、実際に本質的に戦略的なタスクは、若い世代がゲノミクスの先駆者となり、現在の遺伝子技術開発プログラムに参加するよう鼓舞することである。Sirius の経験から、学生は多くの興味深い、有意義なアイデアを有していることが分かっている。Sirius の成功事例に倣って、学校や課外教育センター向けのゲノミクスに関する教育コースや個別セクションのほか、教師のスキル向上のメカニズムを立ち上げるよう提言する。
第3に、最先端の機器による研究の機会は、科学を選択し複雑な研究課題の解決に当たる者にとって極めて重要な刺激である。ロシアはこの機微で意味深い領域で独立性を確保する必要がある。世界レベルで遺伝子研究を行うことを可能にする国内の機器基盤を構築することに関して、政府の提案を期待する。
第4に、遺伝子研究の成否は、主としてデジタル技術と一連のデータへのアクセスによって決まる。研究機器の製作と同様に、この分野での主権を確保する必要がある。バイオインフォマティクスにおける我々のかなりの専門知識と成功事例を活用して、遺伝情報の全国的な基盤を確立することを提言する。
統一された基準に基づいて、データの保護、その保存と転送、および情報の検索、分析、モデリングのためのソフトウェアの開発を確保する必要がある。このプロジェクトのファンディングを実施するよう政府に要請する。これは、連邦予算の基金から行われる必要がある。第5は、ロシアの研究機関、一部の大学、一部省庁の機関の科学的コレクションは、遺伝学における新たな発見の基盤でもある。1920年代にニコライ・バビロフが編集し、国立植物科学研究所が保管している種子と植物のコレクションは、世界的に有名である。このコレクションは国宝と呼んでも過言ではなく、保存、体系化、分析する必要がある。これらの連鎖が遺伝子研究のすべての領域で出現するように、バイオリソース・センターの単一ネットワークを構築する必要がある。これには、医療、農業、産業バイオテクノロジー、バイオセキュリティが含まれる。これらのデータを統合することで、コレクションやデジタル化における保存・拡張の共通基準を開発する道が開かれる。
第6のポイントは、ロシアは科学・技術における協力にはオープンであること。ブレークスルーを達成する用意のある人々が必要とする機会をロシアで見つけられるようにすることが肝心である。
[DW編集局]