[本文]

国・地域名:
ドイツ
元記事の言語:
ドイツ語
公開機関:
マックスプランク協会(MPG)
元記事公開日:
2021/09/02
抄訳記事公開日:
2021/11/01

加齢に伴い言葉が出にくくなる原因を発見

Warum uns mit dem Alter Wörter schlechter einfallen

本文:

2021年9月2日付マックスプランク協会(MPG)の標記報道発表の概要は以下のとおりである。
原因は脳内の特定のネットワークにあることを研究者が発見。
年齢を重ねるごとに、語彙は継続的に増えていくにもかかわらず、適切なタイミングで適切な言葉を思い浮かべることが、困難になる。これまでは、なぜそうなるかは不明であった。マックスプランク認知神経科学研究所とライプチッヒ大学の研究者たちは、その原因が時間の経過と共に彼らのコミュニケーションを変える脳内ネットワークにあることを発見した。これによりコミュニケーションがより非効率になるのである。
遊びの中だけではなく、会話の中でも、時々言葉が欠けることがある。齢をとるにつれて、特定の言葉を見つけるのに、ますます時間がかかるようになる。研究者はその原因が、特定のネットワークの使用方法の変化にあることを発見した。
研究者は、20歳から35歳の若者と60歳から70歳の高齢者の2つのグループの協力を得て、これらの関係を調査した。どちらのグループもMRIを使って、動物、金属、または車輌など特定のカテゴリーに属する単語に名前を付けた。
両方のグループ共に言葉を見つけるのは得意なことがわかった。しかし若いグループの方が、幾分か速かった。この理由は、脳活動の違いにある可能性がある。若いグループでは、言語領域自体がより活発であっただけではない。次の2つの重要なネットワーク内で、より集中的な交換が行われていることがわかった。すなわち、事実に基づく知識が格納されているセマンティック・メモリーネットワークと、注意やメモリーなど一般的な機能を担う執行ネットワークである。
高齢者グループではその逆であった。執行領域はより強い活動を示したが、高齢者にとって、これらの課題を達成することはより困難であることがわかった。さらに重要なネットワーク内の交換は、若いグループより効率的ではなかった。高齢者グループは、ネットワーク間の交換によって最も恩恵を受けるものの、これは損失と関連している。マックスプランク認知神経科学研究所の博士課程研究者で本研究の筆頭著者でもあるザンドラ・マルティーン(Sandra Martin)氏は、次のように述べた、「ニューラルネットワーク内のコミュニケーションは、ニューラルネットワーク間よりも効率的で高速である」。
なぜ加齢で活動パターンが変化するのかについては、これまで完全には解明されてこなかった。マルティーン氏が述べる一つの理論は、人々は、年齢を重ねるにつれて、自身が持つその言語知識に依存し、その結果ネットワーク間の交換に焦点が当たっていたが、一方で若い人々は速いワーキングメモリーや認知・制御プロセスに依存しているというものである。マルティーン氏は次のように付け加えた、「構造的なレベルでは脳内の灰色物質の劣化も影響する可能性があり、劣化はネットワーク間の交換によって補償される必要がある」。

[DW編集局]