[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
大統領府
元記事公開日:
2022/02/25
抄訳記事公開日:
2022/05/06

OSTPが気候会議を開催し、先送り論に反論、緊急行動を提唱

Readout of White House Climate Science Roundtable on Countering “Delayism” and Communicating the Urgency of Climate Action

本文:

2022年2月25日付、大統領府の標記報道発表の概要は以下のとおり。

大統領府科学技術政策局(OSTP)は、自然科学と社会科学の両分野の気候科学者とその他の専門家によるバーチャル会議を開催し、気候変動に対する行動を先送りする議論がなぜ関心を集めるのか、どうすればその議論に効果的に対抗できるのかに関する、科学的理解について議論した。

このイベントは、「気候先送り論」とそれに関連する地球・財政・社会のリスクとコストというテーマで開催された、初めての大統領府レベルの会合である。大統領府のリーダーたちと、11の州とコロンビア特別区から17人の科学者とコミュニケーションの専門家が集まり、意見を交換した。

参加者からの主な意見は次のとおり。

OSTP局長代行で大統領副補佐官のアロンドラ・ネルソン博士は、連邦政府の気候変動対策に資する知識を提供したと会議参加者を賞賛するとともに、本会議が社会科学と自然科学の統合的価値を示すものとした上で、「米国は、10年以内にCO2排出量を半減、2035年までに電力100%クリーン化、2050年までの排出量ネット・ゼロ達成を目指して歴史上最大の投資を行う。この行動に反する短絡的思考に向き合っていく」と述べた。

ジェーン・ルブチェンコOSTP副局長(気候・環境担当)は、「気候危機に対する物理科学的側面は広く認識されているが、社会科学的側面への関心は低く、既得権益が行動を遅らせている。今や先送り論と闘う時である」と述べた。

大統領府上級顧問ニーラ・タンデン氏は、「既得権益が先送り論に油を注いでいる。我々はその現実に立ち向かう必要がある。大多数の国民は気候変動に対する行動を求めている」と述べた。

5人のスピーカーの発言は以下のとおり。

トニー・ライズロウイッツ氏(イエール上級研究科学者)は、気候変動に対する社会的、文化的、政治的風潮は大きく変動しており、全国的行動を起せるようになるまで、あと少しのところにいると訴えた。

アンドレア・ダットン氏(ウイスコンシン大学教授)は、行動の遅延などがもたらす海面上昇の脅威、インフラへの悪影響、影響を受ける住民の不公平感の増大を指摘した。

ジャーノット・ワグナー氏(ニューヨーク大学助教授)は、行動の遅れがさらなる費用を生じ、今はわかっていないことが、より大きな悪影響をもたらす可能性があると警告した。

ダン・アバッシ氏(ダグラス・ワースロップのアドバイザ)は、2100年までの海面上昇を抑えるためキャンドゥ“can-do”精神を発揮する必要があるとした。

マーシャル・シェファード氏(ジョージア大学特別栄誉教授)は、台所談義のテレビにでる科学者ではなく、コミュニティの中に発信者が必要であると述べた。

その他の主な論点は以下のとおり。

ケティ・ウォルター弁護士(アラスカ・フェアバンクス大学教授)は、三倍速で進む北極の温度上昇、永久凍土の融解など特殊な現象を紹介し、ケリー・アード氏(オハイオ州立大学教授)は、気候変動による移民問題と外国人排斥対策の重要性を取り上げ、ジャスティン・ファアレル氏(イエール大学教授)は、脱炭素社会に関わる虚偽情報の流布を取り上げ、ジョン・E・フェルナンデス(MIT教授)は、メタン消費の懸念を過小評価することが天然ガスの代替性を確信させることにつながると指摘し、キャサリン・ヘイホー氏(テキサス工科大学教授)は、家庭など身近な問題を取り上げれば政治的二極化は克服可能であると述べ、ナオミ・オルスク氏(ハーバード大学教授)は、嵐、洪水などは「理論が現実」となった科学的証拠であり、先送りが原因であると指摘し、ジガー・シャー氏(エネルギー省(DOE)貸付計画局長)は、適切な雇用創出と均衡あるエネルギー転換、民間の適切な投資を促す公的計画の重要性を表明した。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]