[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
大統領府
元記事公開日:
2022/03/15
抄訳記事公開日:
2022/05/19

核融合エネルギーの実用化に向けたビジョンの策定

Fact Sheet: Developing a Bold Vision for Commercial Fusion Energy

本文:

(2022年3月15日付、大統領府による標記発表は以下のとおり)

バイデン・ハリス政権は、クリーンエネルギーを生産・展開することにより、高収入の雇用を創出し、エネルギー料金を下げ、エネルギー自立への道を支援するクリーンエネルギーの未来の構築に重点を置いている。

同政権は、太陽や星にエネルギーを供給するのと同じ反応を利用したクリーンエネルギーの技術である核融合の研究を加速するための、大胆な10年ビジョンの策定を進めると発表した。

核融合エネルギーは、安全で、豊富で、炭素を排出しないエネルギー源として大きな可能性があると認識されてきた。長寿命放射性廃棄物を出さず、水素製造、工業熱源、炭素回収、および脱塩のための熱エネルギーと電力エネルギーの複合的なエネルギーを提供する。商用核融合エネルギー技術は、増大する電力需要に応えると同時に、エネルギー産業に革命を起こし、気候危機との闘いを助ける可能性がある。

米国は、エネルギー省(DOE)の国立研究所が主導する独自の核融合プログラムや主要な国際協力に数十年にわたって投資してきた。プログラムの中心は国際熱核融合実験炉(ITER)であり、ここでは、35か国の科学者からなる国際チームが、核融合発電の可能性を証明するよう設計された世界最大のトカマク型磁気核融合装置を共同で建設している。

政権による措置は以下のとおり。
・ 大統領府科学技術政策局(OSTP)とDOEの共催による大統領府核融合サミットの開催
・ 民間部門との協力に基づいたDOEによる商用核融合エネルギーの実現を加速するための10年戦略の立ち上げ

核融合反応の実現は数十年先と思われてきたが、最近の進歩は実現への接近を示している。例えば、以下のとおり。
・ 米国の核融合会社は、20テスラのプロトタイプ高温超電導磁石を実証
・ ITERの中心ソレノイド磁石の導入
・ 欧州トーラス共同研究施設(JET)は、5秒間の高出力パルスで24年前の記録を倍増
・ ローレンス・リバモア国立研究所の国立点火施設(NIF)は、従来記録の8倍のエネルギー収量を達成
・ 中国の実験的高度超伝導トカマク(EAST)は、華氏1億2,600万度で17分間、核融合反応を持続

民間部門は2021年、核融合技術開発に25億ドル以上を出資しており、DOE核融合エネルギー科学諮問委員会や全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)などは、今こそ商用核融合エネルギーを加速する時であるとの見解で一致している。ただし、科学技術上の問題が残り、その最重要点は、現在のシステムでは核融合反応条件を作り出すのに必要なエネルギー量よりも、多くのエネルギーを放出するという、損益分岐点を超えることができることを、未だに実証できていないことである。また実際の核融合発電には、安定し、安全で、信頼性の高い運転、そのほか、安定したプラズマ封じ込め、トリチウムの増殖を含む燃料サイクル、連続運転に耐え得る材料、熱排気の統合的解決策、および核融合装置を熱抽出と電力変換システムに結合させるシステムが求められる。

米国政府は、リスク情報に基づく規制枠組みの構築、安全保障の懸念への対処、国際的規制の調和と効果的輸出管理を通して技術輸出を可能にし、不可欠なサプライチェーンを支え、米国民を積極的に関与させ、多様な労働力を育成するための教育と訓練を提供することにより、商業化への道筋を明らかにする。DOEと民間部門は、科学技術的リスクと市場への影響を分散させる核融合の様々なアプローチを追求する。官民パートナーシップ(PPP)の主な利点は以下のとおり。
・ 商業市場の牽引力との整合性の確保
・ 納税者のリスクとコストの削減
・ 官民部門およびその他の利害関係者を含む総合力の活用
・ 新産業のおける良質な雇用の創出
・ 米国の科学技術イノベーションにより商用核融合における米国のリーダーシップの確保

サミットにおける議論の要点は以下のとおり。
・ DOEと民間部門における核融合技術の進展
・ 核融合発電を実現するための核融合戦略更新の必要性についての啓発
・ 様々な核融合関係者に、既存および予想されるニーズを述べる機会の提供
・ 核融合パイロット施設の開発・実証を加速させるための方法についての理解
・ 技術の現状、気候、エネルギー安全保障、および米国の国際競争力
・ エネルギーと環境正義、エネルギー倫理、環境の持続可能性、多様性、市民参加を支援するステップ
・ 業界のビジョンと課題および米国政府による核融合技術の加速方法

[DW編集局+JSTワシントン事務所]