[本文]
-
- 国・地域名:
- 英国
- 元記事の言語:
- 英語
- 公開機関:
- 英国研究・イノベーション機構(UKRI)
- 元記事公開日:
- 2022/10/19
- 抄訳記事公開日:
- 2022/11/22
-
次世代がん治療技術の研究
- 本文:
-
(2022年10月19日付、英国研究・イノベーション機構(UKRI)の標記発表の概要は以下のとおり)
英国は、イオンビーム治療研究施設(ITRF)の開設を通じて、次世代のがん放射線療法の研究を開始するため、 200万ポンドを投資する。
英国は、がん治療の進歩を推進しており、X線と陽子線の両方を使用する放射線療法で多くの患者を治療している。しかし、一部の腫瘍は依然として治療が困難である。科学者たちは、ヘリウムや炭素イオンなどのより重い粒子がこれらの状況で治療上の利点をもたらす可能性があると信じているが、さらなる研究が必要である。
Sci-Tech Daresburyにある科学技術施設会議(STFC)のDaresbury研究所を通じて計画されたこの 200 万ポンドの実現可能性調査は、UKRIの助成を受けて、英国および海外の一流の臨床医、科学者、エンジニア、産業界を結集して行われる。これには、医療応用の新たなレーザー技術の開発における英国の高度な専門能力、特に英国主導の共同研究である、放射線生物学用レーザーハイブリッド加速器(LhARA)の専門知識を活用する。彼らは協力して、次世代のイオンビーム療法を支える研究を可能にする世界有数の放射線生物学研究施設となるITRFの設計と計画を策定する。
放射線療法は、高エネルギーX線を腫瘍に照射し、がん細胞を死滅させることで、多くのがんを効果的に治療することができる。しかし、放射線が患者の体内を通過する際に、正常な組織に損傷を与え、治療後に合併症を引き起こす可能性がある。従来のX線とは異なり、イオンビームは腫瘍内で留まるため、周辺組織の被曝が劇的に減少する。これは、重要な臓器に近い腫瘍を治療する場合に特に有用である。
イオンビーム療法では、粒子加速器によって炭素などのイオンを光速の約3分の2まで加速する。X線療法でも行われるように、これらのイオンビームを、腫瘍に的を絞ってパルス放射線として照射し、がん細胞のみを死滅させる。炭素などの重いイオンは、従来の治療法に耐性のある一部の種類の腫瘍に対して、より大きなダメージを与えることができる。
この実現可能性調査により、ITRFが世界をリードする放射線生物学研究施設となり、そこでは英国と海外のパートナーが共に次世代治療を追求することができるようになる。LhARAが開発した独自の加速技術を活用して、世界の既存のイオンビーム治療施設では実現できない特性を持つ、強力なイオンビームを提供する予定である。最終的には、最先端のテストベッドを提供し、それによって学術、診療、産業の各界が、より正確で、柔軟性があり、費用対効果が高い放射線治療を可能とする新たな技術を開発することになる。
[DW編集局]