[本文]

国・地域名:
EU
元記事の言語:
英語
公開機関:
欧州委員会(EC)
元記事公開日:
2022/11/09
抄訳記事公開日:
2023/01/12

再生可能エネルギー普及加速のための緊急措置の提案

REPowerEU: Commission steps up green transition away from Russian gas by accelerating renewables permitting

本文:

(2022年11月9日付、欧州委員会の標記発表の概要は以下のとおり)

欧州委員会は本日、再生可能エネルギー源の展開を加速する、新たな一時的緊急規制を提案した。供給源の多様化や省エネルギー化と併せて、再生可能エネルギーのさらなる導入は、ロシアの化石燃料への依存を終わらせるというEUの計画の一環である。再生可能エネルギーは、短期的にも将来的にも、電力、冷暖房、産業、運輸の各分野において、EUの化石燃料需要を削減することができる。運用コストが低いため、EUのエネルギーシステムにおける再生可能エネルギーの割合が大きくなれば、エネルギー料金の削減に繋がる。

現在進行中のエネルギー危機においては、REPowerEU計画を加速するために、迅速かつ的を絞った施策が必要である。欧州理事会は先ごろ、再生可能エネルギーの展開を加速するため、許可手続きの迅速化を求めた。REPowerEUは、再生可能エネルギーおよび関連インフラへの投資の障害となっている、長く複雑な行政手続きを改善するための措置をすでに提案している。しかし、その後、エネルギー市場はさらに悪化しており、緊急の対策が必要となっている。これが、欧州委員会が新たな規則の提案を行った理由である。

今回の提案は、エネルギー市場の例外的な状況にも対処し、クリーンエネルギーへの移行を加速するための従来の緊急措置を補完するものである。同規則は、1年間適用され、その間、現在議論されている「再生可能エネルギー指令」の全加盟国による採択と移行を進める。また、ロシアによるウクライナ侵攻とエネルギー供給の武器化に直面する中、エネルギー安全保障に貢献するため、迅速な展開が可能で、環境への影響が最も少ない技術やプロジェクトを対象としている。

■公益の優先

本提案の下では、再生可能エネルギー発電所は公共の利益を優先するものと想定される。本提案による新たな許可手続きは、EU環境法で設けられた特例条項の適用を受け、直ちに簡素化される。さらに、この提案は、再生可能エネルギープロジェクトの許可プロセス上のボトルネックを解消するために、EU の「鳥類指令」と「生息地指令」で規定されている規則の適用範囲を明確にしている。

■太陽光エネルギー

太陽光エネルギーは、低コストの再生可能電力および熱源であり、迅速に展開でき、市民や企業に直接的な利益をもたらす。電力価格が大きく変動する現状に鑑み、許可手続きを大幅に迅速化することで、ビルなどの人工構造物への太陽光発電設備の設置ペースを加速させる。そのため、欧州委員会は、太陽光エネルギー機器および併設された蓄電池と送電網接続について、地山に設置されていない場合の許可手続きの期限を、最大1か月とすることを提案している。また、提案された規則では、これらの設備に対して一定の環境評価の実施を免除している。許可手続きに「積極的行政黙認」の概念を導入することで、小規模施設の展開を促進・加速させる。

■再生可能エネルギー発電所のリパワリング

既存のクリーンエネルギー発電所のリパワリングは、すべての再生可能エネルギー源からの発電量を急速に増加させる大きな可能性を秘めている。これにより、ガス消費量が削減され、新たな発電所用地を指定する必要もなくなる。今回の提案は、再生可能エネルギー発電所のリパワリングの許可プロセスを最長6か月とし、その中で、関連するすべての環境アセスメントも行うとしたことで、簡素化を図った。この提案はまた、環境アセスメントは、元の発電所の変更または拡張から生じる潜在的な影響の評価のみに限定されるべきであるとしている。さらに、リパワリングが元の発電所と比較して、発電量の増加が15%以下である場合には、送電網に関する手続きの簡素化も導入している。

■ヒートポンプ

ヒートポンプは、周囲のエネルギー源によって再生可能な冷暖房を行う重要な技術であり、産業と建築物の両方で、暖房のためのガス使用量を削減する大きな可能性を秘めている。この技術の普及を加速するため、本提案では、許可手続きを最長3か月とし、また小型ヒートポンプの送電網接続の許可手続きの簡素化を導入することで、許可の交付を加速する。

[DW編集局]