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国・地域名:
英国
元記事の言語:
英語
公開機関:
科学・イノベーション・技術省(DSIT) 
元記事公開日:
2023/03/16
抄訳記事公開日:
2023/04/12

技術と科学の未来に最大35億ポンドを拠出

Government commits up to £3.5 billion to future of tech and science

本文:

(2023年3月16日付、科学・イノベーション・技術省(DSIT)の標記発表の概要は以下のとおり)

財務大臣は、昨日下院で春季予算を発表し、来年度の財政計画を明らかにした。その中で、英国を科学技術の超大国にするという政府目標を支援するため、約35億ポンドの拠出を表明した。今回発表された資金は、DSITが英国経済の成長、全国の産業界の人々のためのより良い賃金の仕事と機会の創出など、首相の主要優先課題の遂行を支援するものである。

財務大臣はまた、政府が、新興デジタル技術の規制に関するパトリック・ヴァランス政府主席科学顧問のレビューで提示されたすべての提言を受け入れることを発表した。これは、未来技術の規制に関する判断基準を打ち立て、世界中で採用可能な雛形を提供するという政府計画の一環を成すものである。

今週の予算発表は、先週の政府の「科学技術枠組み(Science and Technology Framework)」の発表に続くものである。この枠組みは、英国がゲームチェンジングな技術で世界をリードするためのスキルと基盤構造の確保を支援する3億7,000万ポンドの新規資金とプロジェクトによって支えられている。

■ イノベーション・アクセラレータ

財務大臣は、全国の地域の成長を促進する拡張計画の一環として、グラスゴー、マンチェスター広域、ウェスト・ミッドランズの26の革新的な研究開発プロジェクトに1億ポンドを投資する計画を発表した。「イノベーション・アクセラレータ(Innovation Accelerators)」プログラムは、都市圏が世界的に競争力のある研究・イノベーションの主要拠点になることを支援する新たなアプローチであり、レベリングアップを支援するものである。

このプログラムに渡り、各地域のリーダーは、研究開発に関する意思決定の新たなモデルを先導する事を通じて、地域の経済成長支援にイノベーションを活用する権限を与えられる。本プログラムの下、地方自治体、企業、研究開発機関により採択された26のプロジェクトには、次のものが含まれる:

・新たな健康・医療技術の開発を促進するバーミンガム大学主導のプロジェクト
・最先端のAI研究・技術を企業に提供し、生産性の向上を目指す「マンチェスター・チューリング・イノベーション・ハブ」
・グラスゴーにおける先進製造技術、宇宙、精密医療などの主要な成長イノベーション分野への投資促進支援

■ 量子戦略

英国は10年以上にわたって量子技術で世界をリードしてきたが、この成果をさらに発展させるための新戦略が打ち出された。この戦略により、新たな投資、急成長する企業、質の高い雇用を英国にもたらし、量子技術を商業化する最高の場所としての英国の評価を確固たるものにすることができる。すでに欧州で最も多くの量子技術スタートアップが存在し、欧州のどの国よりも多くの資本投資を集めている英国には、量子に関する計り知れないチャンスがある。

戦略の中で、国家プログラムの次の10年間(2024年から2034年)で、25億ポンドの公的資金の提供を約束している。これは、年間約1億5,000万ポンドの資金増に相当する。これにより、英国は野心的で世界的に競争力のあるプログラムを提供することになり、この分野で歓迎されるだろう。この投資は、英国を科学技術大国にするという我々の目標を支援し、科学的卓越性を基盤として成長を促進し、強く強靭性のある経済と社会の構築に貢献するものである。

■ 研究開発減税

政府は、研究開発・イノベーションが経済と社会に果たす重要な役割を認識しており、研究開発の支援に引き続き取り組んでいる。2023年4月1日から、政府は、赤字の研究開発集約型中小企業(SME)に対する軽減税率の引き上げを行う予定である。該当する企業は、研究開発投資100ポンドにつき27ポンドを、英国歳入関税局(HMRC)から受け取ることになる。

■ AI白書とAIサンドボックス

AIコンポーネントを搭載した製品に厳格なルールを設定するのではなく、AIの応用に焦点を当てたAI規制への新たなアプローチが、近々発表されるAI白書で示される予定である。このアプローチは、企業の自信を高め、投資を促進し、国民の信頼を高め、最終的に経済全体の生産性を向上させることになる。

また、新たなAIサンドボックスを立ち上げ、規制が将来のAIにどのように適用されるかをテストするためのワンストップ・ショップとして機能し、イノベーターが、通常のルールに妨げられることなく、最先端の製品を市場に投入できるように支援する。政府はまた、ジェネレーティブAI(generative AI)に関する知的財産権法の適用を明確にする作業に速やかに取り掛かる。

■ エクサスケール・スーパーコンピュータ

財務大臣はまた、新たな「エクサスケール」のスーパーコンピュータと専用のAI研究リソースに約9億ポンドを投資することを確認した。エクサスケール・コンピュータは、コンピューティングの次なるフロンティアであり、今回資金を提供するシステムは、英国の既存のトップ・スーパーコンピュータよりも数倍強力なものとなる。

この資金提供により、英国のコンピューティング能力は大幅に向上し、研究者は、気候変動の解明、新薬の発見、AIの可能性の最大化など、社会や経済界のすべての人々に利益をもたらすブレークスルーの創出を行うことが可能となる。英国は、エクサスケール・コンピュータを保有する世界でも数少ない国の1つになり、最高の人材を惹きつけ、研究者が世界で最高のインフラを利用できるようになる。

■ Web3

本予算はまた、英国がWebテクノロジーの未来を先取りし、Web3の可能性を最大化することにもコミットしている。Web3は、分散化、オープンソース・アプリケーション、ブロックチェーン・コンピューティング・アーキテクチャを取り入れた、将来のインターネットの反復開発計画である。

■ AIチャレンジ賞

本予算ではまた、政府が、AIに関する最高の研究に対して今後10年間、毎年100万ポンドの賞金を授与することを確認している。

[DW編集局]