（2023年6月20日付、欧州委員会の標記発表の概要は以下のとおり）

欧州委員会がこのほど提案した欧州戦略的技術プラットフォーム（STEP）は、EUの既存の制度を強化・活用して、事業投資に資する資金支援を迅速に展開するものである。また、STEPにより、既存の資金を欧州のリーダーシップにとって重要な技術分野に振り向けることが可能となり、「単一市場（Single Market）」全体にわたる投資の公平な競争条件の実現に寄与する。

STEPは、InvestEU、「イノベーション基金」、Horizon Europe、EU4Health、「デジタルヨーロッパプログラム（DEP）」、「欧州防衛基金」、「復興・強靭化ファシリティ（RRF）」、「結束政策基金」などの既存のプログラムを基盤として構築される。

STEPの目標の推進に特化した投資能力を高めるため、欧州委員会は、下記の対象プログラムに100億ユーロの追加予算配分を提案している。

・InvestEUに30億ユーロ。割り当て率40%、平均乗数10とすると、750億ユーロの投資となる。
・Horizon Europeに5億ユーロ。これに未執行の21億3,000万ユーロの再配分・活用を加え、平均乗数を5とすると130億ユーロの投資となる。
・イノベーション基金に50億ユーロを充てる。イノベーション基金でのこれまでの実績を考慮すると200億ユーロの投資となりうる。
・欧州防衛基金に15億ユーロ。最大20億ユーロの投資となる可能性がある。

上記4プログラム・施策（InvestEU、Horizon Europeの欧州イノベーション会議（EIC）、イノベーション基金、欧州防衛基金）の強化を合わせると、STEPの対象となる重要技術への追加投資は、約1,100億ユーロに達すると期待される。

結束政策基金に、より高額な事前融資や協調融資の形で財政的インセンティブを提供することで、加盟国は自国のプログラムの優先順位を再設定することが奨励される。STEPの優先課題に対して5%のプログラム再設定が行われるごとに、「公正移行基金（JTF）」から支払われる60億ユーロに加えて、189億ユーロの資金が利用可能になる。さらに、RRFの上限が引き上げられ、InvestEUに資金を使用できるようになったことで、加盟国が技術主権に資する投資のために300億ユーロを追加的に利用できる可能性がある。

総計すると、STEPを通じた新規投資の推定総額は、最大1,600億ユーロに達する可能性がある。

STEPは、次の分野の重要技術のEU域内での開発・製造を支援する。

・ディープテック・デジタル技術
マイクロエレクトロニクス、高性能コンピューティング、量子コンピューティング、クラウド・コンピューティング、エッジコンピューティング、人工知能、サイバーセキュリティ、ロボティクス、5Gおよび高度な接続性、仮想現実など（防衛・航空宇宙応用開発のためのディープテック・デジタル技術に関連する施策を含む）

・クリーン技術
再生可能エネルギー、電気や熱の貯蔵、ヒートポンプ、電力網、非生物由来の再生可能燃料、持続可能な代替燃料、電解槽および燃料電池、炭素の回収・利用・貯蔵、エネルギー効率、水素、スマートエネルギー・ソリューション、浄水や淡水化など持続可能性に不可欠な技術、ナノ材料・複合材料・将来のクリーン建設材料などの先端材料、重要原材料の持続可能な抽出・加工技術など

・バイオ技術
生体分子とその応用、医薬品、医療技術と作物バイオ技術、バイオ製造など

[DW編集局]