[本文]

国・地域名:
EU
元記事の言語:
英語
公開機関:
欧州委員会(EC)
元記事公開日:
2023/10/24
抄訳記事公開日:
2023/11/20

欧州委員会、風力発電産業を支援する緊急措置

Commission sets out immediate actions to support the European wind power industry

本文:

(2023年10月24日付、欧州委員会の標記発表の概要は以下のとおり)

最近合意された2030年までに再生可能エネルギーを少なくとも42.5%にするというEU目標を達成するには、再生可能エネルギーを45%にするという野心的目標を掲げ、風力発電設備容量を大幅に増加させる必要があり、2022年の204GWから2030年には500GW以上に増加させることがもとめられている。

風力発電部門はEUの歴史的な成功事例である一方で、その将来の成長行程は、不十分で不確実な需要、遅く複雑な認可、原材料へのアクセス、インフレーションと物価高騰、国家入札の不便な設計、国際的競争相手からの重圧、熟練労働力確保のリスクなど、一連の課題に直面している。

この状況には早急な対応策が必要である。そのため、フォン・デア・ライエン委員長が先月の一般教書演説で発表したように、欧州委員会は本日、クリーンエネルギー移行が産業競争力を高めることを確実にするための、「欧州風力発電行動計画(European Wind Power Action Plan)」を発表した。

この行動計画は、明確かつ安全なプロジェクトのパイプラインにより、必要な資金を誘引し、世界における平等条件での競争に臨み、健全で競争力のある風力エネルギーのサプライチェーンの維持に資するものである。

◼ 課題に取り組む欧州共通の対応策

本行動計画は、欧州委員会、加盟国、産業界が協力して取るべき緊急の措置を定めたもので、 既存の政策と法律に基づいて、次の6つの主要領域に焦点を当てている。

・予測可能性の向上とより迅速な認可による導入促進
2022年には過去最高の16GWの風力発電設備が追加され、2021年比で47%増である。しかし、これはEUの2030年再生可能エネルギー目標達成に必要な年間37GWを大幅に下回っている。欧州委員会は、改正されたEU再生可能エネルギー規則の迅速な実施を確実にするため、加盟国とともに「Accele-RES」イニシアチブを立ち上げ、認可プロセスのデジタル化と加盟国への技術支援に重点を置いている。

・入札制度の改善
「ネットゼロ産業法(Net-Zero Industry Act)」と「電力市場設計(Electricity Market Design)」の改革に基づき、欧州委員会は、より付加価値の高い機器に恩恵を与え、プロジェクトが完全かつ予定通りに実現されるよう、適切に設計された客観的な基準を持つ入札制度へと改善することで加盟国を支援する。EU域外では、「グローバル・ゲートウェイ」プロジェクトが戦略的調達基準の活用を拡大する。行動計画では、サイバー・セキュリティのリスク評価も予定されている。

・資金へのアクセス
欧州における風力エネルギー生産への投資や融資を加速させるため、欧州委員会は、特に「イノベーション基金(Innovation Fund)」を通じたEU融資へのアクセスを奨励する一方、欧州投資銀行(EIB)はリスク軽減保証を提供する。

・公正で競争力のある国際環境
風力発電部門が公平な競争環境で活動できるよう、欧州委員会は、外国の風力発電メーカーを利する不公正な取引慣行を注意深く監視する。

・スキル
「再生可能エネルギー大規模スキル・パートナーシップ(Large-Scale Skills Partnerships for Renewable Energy)」は、スキル開発プロジェクトを展開するための重要なフォーラムとなる。

・産業界の関与と加盟国の取り組み
欧州委員会は、加盟国および風力産業界と協力して「EU風力憲章(EU Wind Charter)」を策定し、欧州の風力産業が競争力を維持するための環境整備を行う。

◼ 洋上風力発電導入加速のための新たなビジョン

2020年の「洋上再生可能エネルギー戦略(Offshore Renewable Energy Strategy)」に基づき、加盟国は最近、2050年までの洋上再生可能エネルギー発電に関する野心的な新目標、およびEUの5つの海域ごとの2030年と2040年の中間目標について合意した。

平均して年間約12GWの容量を新設する必要があり、これは、昨年新設置した1.2GWの10倍に相当する。

[DW編集局]