[本文]

国・地域名:
フランス
元記事の言語:
フランス語
公開機関:
国立科学研究センター(CNRS)
元記事公開日:
2024/04/10
抄訳記事公開日:
2024/05/27

COVID-19:大規模な監視の総括

Covid-19 : bilan d’une surveillance massive

本文:

(2024年4月10日付、国立科学研究センター(CNRS)の標記記事の概要は以下のとおり)

フランスは、2020年3月、COVID-19パンデミックに対して最も厳しいロックダウンを行った国の一つであるが、社会学者ニコラ・マリオット氏は、これを検証し、集団服従の経験に疑問を呈している。

――全ての国が同じ対策を取らなかったのか?
2020年春、各国は少ない情報の中で異なる政策を取った。欧州ではフランスをはじめ、南部5か国が国民のあらゆる移動を制限し、一方、北欧諸国等はマスクの着用等の対策は実施しつつも外出は自由とした。「戦争」という表現をめぐって人々への説明も異なった。

――フランスでは、県などが国の対策をさらに強化したのでは?
知事等は「より制限的な措置をとる」とし、実際に躊躇せず実行した。複数の県が外出禁止令を出し、公共の場に規制をかけたが、人々を平等に扱う原則に疑問が生じた。

――フランスが取った強制的な政策をどう説明できるか?
イタリアは、欧州で最初に対策を講じたが、その後厳しい対策を実行した国がより医学的なリスクに晒されたということではない。この違いは、政府による強制的な措置に慣れているかどうかと関係する。一人当たりの警察官の数の多さや市民的自由の認知度の低さが国民の閉じ込めを招いている。このパンデミックで人々を管理する古い習慣が再来した。フランスの場合、勧められた政策に従う住民の能力に対する当局の信頼の欠如を示しており、また国は国民の不満が背景にあるためその敵対的反応を恐れたといえる。

――フランスでは他の国よりも警察のチェックがより頻繁に行われたか?
2020年4月に実施された調査では、28%の人が2020年3月17日から5月11日までに少なくとも1回はチェックされた。また県によってチェックや罰金の状況は異なった。

――これらのチェックにより罰金が科せられたか?
県により異なるが、事実上市民の間に不平等が生まれた。また欧州で見れば、スペインが最も罰金を多く科され、オランダが最も少なかった。

――強制的な措置に対する大部分の国民の服従をどう説明できるか?
ウイルスと警察という2つの恐怖の原因があり得る。調査ではマスクの着用等の対策を守った人は50%以下であり、ウイルスへの恐怖だけでは規則への服従を十分に説明できない。一方、他人との比較という次元で見ると、人々は自らを模範としたり、隣人の特権を気にしたりするものであり、当局への非難が爆発的に増えた背景ともなっている。規則が恣意的に適用されない限り、疑問視はされない。したがって対策は徹底して実施される必要があった。

――他の国々はより厳しい措置か?
中国では、健康上の理由と新しい規則の制定は関係しており、フランスと異なり、ロックダウンは感染状況に応じて順次その地方に適用されている。

――今後やり直すとすれば、どの国が良いか?
日本、台湾、デンマークなどは、期間中、自宅待機を課さずに死亡率を抑えてきた。フランスは注目すべきとはいえず、スペインとともにこのロックダウンが違憲と言われるほど住民を閉じ込めた国である。

――この調査で驚いたことは?
主要なメディア等が規制という観点からのパンデミックの評価に興味を持たなかったことである。この経験からの教訓は多く、実際、県などに大きな裁量が残されていたため、適用方法が比較的不平等であったといえる。最後に第一次世界大戦に関わる歴史家としては、中断された自由と制御を失った政府の正当化が新しい形で見事に一体化され、ほぼ一世紀後に同じように繰り返されたことに驚いた。

[DW編集局]