[本文]

国・地域名:
フランス
元記事の言語:
フランス語
公開機関:
内務省
元記事公開日:
2024/07/08
抄訳記事公開日:
2024/07/08

下院選、左派連合が勝利 与党連合は次点、極右は3位に

Publication des candidatures et des résultats aux élections Législatives 2024

本文:

 フランス下院(国民議会、577議席)総選挙の決選投票が7日に行われ、内務省が発表した開票結果などによると、左派政党の連合「新人民戦線」(NFP)系が178議席を獲得して勝利を収めた。マクロン大統領が率いる中道与党の連合「アンサンブル」系は156議席を得て次点に付けた。一方、選挙戦当初に最も優勢とみられていた極右政党「国民連合」(RN)系は142議席にとどまり、第三党となった。

 主な会派の議席数は次の通り(内務省が発表した政党ごとの得票数を、DW編集局が会派ごとに合算した)。

  • 左派連合「NFP」系(不服従のフランス、フランス共産党、社会党など):178議席
  • 中道連合「アンサンブル」系:156議席
  • 極右政党「RN」系:142議席
  • そのほかの右派系諸派(共和党など):66議席

 【解説】今回の総選挙は、欧州議会選挙の結果を受けたマクロン大統領が、6月9日に憲法上の大統領権限で下院を解散したことに伴って行われた。フランス下院は小選挙区制を採用し、各選挙区から1人ずつ選出する。比例代表制などは併用しない。まず全ての選挙区で1回目の投票を行い、有効票の過半数を得た候補者は当選が確定し、いずれの候補者も過半数に達しない選挙区では、有効票の12.5%以上を得た候補のみで翌週に決選投票を行う仕組みである。

 6月30日の1回目の投票では、全577議席中76議席が確定。このうち過半数の39議席をRN系が掌握したため、第五共和制史上初めて、極右勢力だけで過半数(289議席以上)を取って組閣する可能性が指摘された。これに危機感を覚えたNFPやアンサンブルは、RN系候補が有利とみられた200以上の選挙区で急きょ候補者を一本化し、RNへの対抗票の集約を図った。当初は最も優勢とされたRNが決選投票で失速したのは、NFPやアンサンブルのこうした戦略が効を奏したためとみられる。

 ただマクロン大統領の政権運営が厳しさを増すことは必至だ。まず自ら率いるアンサンブルは下院の主導権を失い、大統領府と下院の間で「ねじれ」が生じた。さらに今回勝利したNFPは、極左政党「不服従のフランス」(LFI)、左派「フランス共産党」、中道左派「社会党」(PS)など、立場の隔たる複数の政党が相乗りする、”選挙対策”の色彩が濃い会派であり、必ずしも一枚岩ではない。議会運営にあたってスムーズな意思統一や政治協力が図れるかどうかは未知数で、政府予算案や法案などの審議を難渋させるリスクをはらんでいるからだ。

 フランスの科学技術・イノベーションや研究開発をめぐっては、2010年代まで政権を担ってきたPSと中道右派「国民運動連合」(現在の共和党の前身)の両党が長年にわたり政治的な協力関係を築き、それを基盤として政府が投資を拡充してきた歴史がある。2021~30年の10年間、わが国でいう運営費交付金や科学研究費助成事業などの予算を毎年増額する方針を示した「複数年研究計画法」(中期研究計画)はまさにその結実だが、この予算の今後の見通しもまた、現時点で不透明と言わざるを得ない。10~12月頃に予定される来年度の当初予算案の審議が注目される。(フランス担当フェロー・内田遼)

[DW編集局]