[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)
元記事公開日:
2024/08/29
抄訳記事公開日:
2024/10/02

NASEM、「米国はSTEM人材の採用・確保に新たな戦略が必要」と提言

United States Needs New Strategy to Recruit and Retain STEM Talent, Says New Report

本文:

(2024年8月29日付、NASEMの発表した報告書の概要は以下のとおり)

全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)が新たな報告書を発表し、米国は科学・技術・工学・数学(STEM)分野の人材を採用・確保するため、政府全体の戦略を採択すべきと提言した。

外国生まれの人材は米国のSTEM労働力の相当部分を占め、イノベーション、経済競争力、国家安全保障を促進し維持する上で非常に重要である。米国は歴史的に世界のSTEM人材を惹きつける国として卓越していたが、敵対者や伝統的パートナーとの世界的競争の激化、移民を巡る複雑なプロセスと二極化した言説、包括的人材戦略の欠如が、国際人材に対する米国の魅力と優位性を維持する上で課題となっている。

本報告書は、米国はK-12(訳注:概ね幼稚園から高校に相当)から高等教育までの全段階で国内のSTEM人材育成の機会を逃していると述べ、政府全体の人材戦略の一環として、複数の部門やレベルに対しさまざまな行動を推奨している。議会に対しては、資格を有する外国生まれのSTEM人材や米国の教育機関のSTEM卒業生が永住権や市民権を取得するプロセスの簡素化・合理化、グリーンカードの追加承認、STEM分野で働く外国生まれの個人の米国訪問・滞在者数を制限する障壁の低減を促している。また、連邦・州・地方・部族政府に対し、国家安全保障イノベーション基盤の重要な要素として、国内のSTEM人材を育成するために積極的アプローチを取るよう助言するとともに、議会が1958年国防教育法をモデルにした法律を制定し、国内のイノベーション能力を確保することを提言している。

外国生まれの研究者が米国の国家安全保障上の重要分野に関与することから生じる懸念に対処するため、連邦政府の資金提供機関は、国際的な研究協力の透明性を優先し、広範なカテゴリを適用するのでなくケースバイケースでリスクを評価することも提言している。

さらに、米司法省の旧「中国イニシアチブ」に関し、それが中国系研究者や彼らの米国STEMへの関与、さらにあらゆる人種・民族にとって米国が魅力的で歓迎される場所であるとの認識に与えた萎縮効果を指摘している。長引く懸念に対処するとともに、国家安全保障上のプログラムが出身国・民族に基づいて人々を標的にしたり、軽率に差別したりしないようにするための措置を講ずるべきと述べている。

報告書はまた、米政府が以下の措置を講ずるべきと勧告している。

・大学、産業界、国立研究所や広範な科学コミュニティと協力し、開放性、透明性、研究セキュリティとインテグリティの原則を強化しながら、強固な国際研究協力と学生やアイデアといった才能の国際的な流れを促進すること
・研究セキュリティとインテグリティ、国際研究協力に関するガイダンスとトレーニングを引続き開発すること
・研究セキュリティ強化とリスク軽減のための措置が、基盤的研究に係る国際協力を制限したり、不当に阻害したりしないようにすること
・信頼できる同盟国との関係を基盤として、より強力な協力関係を発展させ、戦略的利益を共有する分野で国際人材の能力を継続的に確保すること
・既存のあらゆる権限を行使し、国益上の重要分野で働く専門家の永住権申請を可能にするなど、既に米国に居住する外国生まれのSTEM専門家を保持すること
・大学・財団・産業界における低・中所得国やグローバルサウスの国々との強力な国際研究協力・教育プログラムの構築を支援し、国際人材の育成と流動化、活発な意見交換を促進すること
・情報を収集・集約し、国際的人材に係る重要指標を提示する公開ダッシュボードを開発すること

[DW編集局]