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- 国・地域名:
- 米国
- 元記事の言語:
- 英語
- 公開機関:
- 全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)
- 元記事公開日:
- 2024/11/21
- 抄訳記事公開日:
- 2025/01/15
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NASEM、AI技術が労働力に与える影響に関する報告書を公表
- 本文:
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(2024年11月21日付、全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)の標記発表の概要は以下のとおり)
NASEMは、国立科学財団(NSF)の後援のもと、AIが労働力について与える影響に係る調査報告書を発表した。
本報告書は、2021年国防権限法の一部として議会から要請されたもので、AIがどのように人間の労働力を補完または代替し、雇用市場を再形成し、労働力のダイナミクスに影響を及ぼすかを検証している。そして、AIは社会が共有する価値観や目標に従って開発されるべきであり、人間の幸福を高め、集団の能力を増強し、将来的に十分な能力を備えた労働力を支援するために使用されるべきであることを強調している。また、人間の労働力を強化し、専門知識を補完し、新しい形の価値ある仕事を生み出すためにAIを導入するには、意図的な設計が必要となるため、AIの有益な導入に向けた研究や政策立案の指針となるシナリオも示している。
具体的には、次のような指摘と提案を行っている。
▽現状の把握・測定: AIの進化・進展とその実装、様々な専門知識に対する需要、労働力への影響に関する情報を収集し、透明性をもって共有することが望まれるが、情報収集のギャップは依然として残っており、データへのアクセスと統合は継続的な課題である。
▽AIと生産性: AIの恩恵を十分に享受するには、新たなスキルや組織プロセス、構造への投資や研究が必要である。AIの生産性向上の恩恵は業者や職種により大きく異なり、所得や富の不平等が拡大する可能性がある。また、プライバシーへの脅威、差別や偏見の可能性、政治的安定へのリスク、国家安全保障への懸念など、AIによる社会的リスクや影響に対処するための研究が必要である。
▽労働者への影響: AIの進歩が賃金を押し下げ、労働者の監視、プライバシーへの懸念、創造的な成果物の所有権の問題などのリスクを高める可能性がある。人間を補完するAIの設計の最善な方法、創造的な仕事に対するコントロールと報酬のあり方等の研究を支援すべきである。
▽教育と訓練への影響: AIは、教育の全体的な供給と需要、そしてその供給方法の両方に影響を与える可能性が高く、教育をより個別化し、魅力的で費用対効果の高いものにすることで、学習成果を向上させ、教育システムに前向きな変革をもたらす可能性を秘めている。
▽政府によるAIの推進: 意思決定者は、将来起こりうる技術の進歩や時間的な制約に対応できる堅牢な政策を策定する必要がある。
▽中核技術の進展: エラーやバイアスの影響によるAIの不完全性の社会受容、プライバシーへの懸念等により、技術的進歩と社会的採用の速度が遅くなる可能性がある。他方、計算能力の向上、革新的アルゴリズム、投資の増加、トレーニング用オンラインデータ量の増加は、AIのイノベーションを促進する可能性がある。 [DW編集局]