[本文]

国・地域名:
フランス
元記事の言語:
フランス語
公開機関:
首相府投資総務庁(SGPI)
元記事公開日:
2025/04/17
抄訳記事公開日:
2025/05/15

政府、水素戦略を改訂 35年に8.0GWの電気分解目指す

Stratégie nationale hydrogène (SNH II) : Le Gouvernement publie sa mise à jour

本文:

(2025年4月17日付、首相府投資総務庁(SGPI)の標記発表の概要は、以下のとおり)

バイルー首相による4月10日の国家水素戦略の見直し発表を受け、エコロジー移行・生物多様性・森林・海洋・漁業省のアニエス・パニエ=リュナシェ大臣や政府の投融資計画「フランス2030」を所管するSGPIのブルーノ・ボネル長官(事務総長)らは17日、改訂された国家水素戦略を正式に発表した。

国家水素戦略は、エネルギーおよび産業の主権を確保するために不可欠な低炭素水素の開発目標を定めるものであり、今回の見直しは、重工業や高排出型輸送部門の脱炭素化を促進すべく、過去5年間に生じた構造的変化を反映したものである。

◇2020年以降の国家水素戦略の成果

戦略の策定から5年が経過する中、仏政府は150件を超える水素関連プロジェクトを支援しており、特に政府の投融資計画「フランス2030」の枠組みで推進された施策により、2030年までに8,000人の直接雇用創出が見込まれており、フォス=シュル=メールなどの地域においては、水素製造プラントの設置が計画されている。また、水素に関する欧州共通利益重要プロジェクト(PIIEC)の実施により、電解槽・燃料電池・水素貯蔵タンクなどの機器分野におけるギガファクトリーが国内に展開され、石油化学製品・アンモニア製造などの産業用途向けに大規模な水素供給が初めて実現しつつある。

これらの成果は将来性を示すものだが、水素による脱炭素化ソリューションの社会実装には依然として時間を要する。一方、その大規模展開に必要な技術的および経済的成熟は着実に進んでおり、同時に国際競争の激化や他の脱炭素化手段の急速な進展といった新たな構造的課題にも直面している。

◇新たな状況に適応した戦略の方向性

政府は、水素セクターの次なる成長段階に向け、以下の新たな方針を示した。

– 市場の進展の遅れおよび技術開発に要する時間を考慮し、国内での電気分解設備の導入目標を見直す(2030年までに4.5GWだった従来の目標を、2035年までに8GWに改める)。
– 水素技術のバリューチェーン全体を掌握しつつ、既存プロジェクトの産業化とエコシステムの統合を推進する。
– 主要水素ハブでの生産者と消費者の接続を優先し、輸送インフラと貯蔵設備への接続を推進する。
– 人材、土地、手続き、規制、電力接続といった制度的基盤を整備し、水素セクターの発展を支援する。

◇具体的措置と支援内容

政府は以下の具体的施策を通じて、これまでの取り組みを加速させる。

– 低炭素水素の価格競争力を15年間にわたって確保するため、総額40億ユーロを投資
– プロジェクト公募の再開による水素に関わる重要な要素技術の開発に対する継続的支援
– 燃料電池や水素貯槽の技術開発の促進のため、2025年の軽商用水素車購入支援に向けた新たな公募の開始
– 2030年までに航空および海運分野向けの合成燃料の工業生産を開始するための「持続可能な航空燃料(CARB AERO)」プロジェクトの公募

◇政府が支援する構造化プロジェクト

政府は水素産業への取り組みを改めて強調し、以下の構造的プロジェクトへの新たな支援を発表した。

– 産業・エネルギー分野の脱炭素化:アンモニア製造を担う”GreenHorizon” (Lhyfe/Yara)および製油所の脱炭素化を進める“Masshylia”(Total/Engie) への新たな支援
– バリューチェーンの高度化:機器メーカーGen-Hyによる、低炭素水素を製造する電解槽用陰イオン交換膜(MEA)の革新的技術の産業化をPIIECの下で支援
– 水素モビリティの推進:「フランス2030」による「持続可能な航空燃料(CARB AERO)」のプロジェクト公募の受賞者の決定
– 人材育成と技能訓練:ブルゴーニュ・フランシュ・コンテ地域での水素教育プログラム「Ecole H2」に対する「フランス2030」の「未来の技能と職業」プログラムによる支援

[DW編集局]