[本文]
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- 国・地域名:
- ドイツ
- 元記事の言語:
- ドイツ語
- 公開機関:
- 国家科学アカデミー(Leopoldina)
- 元記事公開日:
- 2025/04/15
- 抄訳記事公開日:
- 2025/05/30
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レオポルディーナが科学的知見の自由なアクセスを実現する新たな学術誌出版資金モデルを提唱
- 本文:
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(2025年4月15日付、国家科学アカデミー(Leopoldina)の標記発表の概要は以下のとおり)
科学的知見に誰もがアクセスできることは、科学の発展と社会課題の解決の両面において不可欠である。しかし、ペイウォール(有料コンテンツの壁)が科学的知見へのアクセスを妨げる要因となっており、結果として公的資金が犠牲にされ、科学の質も犠牲にされることが増えている。
このような状況を踏まえ、本ディカッションペーパーの著者らは、すべての人々が財政的制約に左右されることなく研究成果を発表・利用できるようにするための、新たな資金提供原則を提唱している。
この基本的な考え方は、研究活動が公的資金により支えられている現行制度に倣って、学術誌の運営費もまた同様の競争的資金により賄い、あわせて定期的な評価を行うというものである。これにより、研究の質、透明性、科学的妥当性を長期的に確保しつつ、コスト削減も実現し得る。
現在、世界の学術誌出版は、ごく少数の営利を目的とする出版社によって支配されている。これらの出版社は、各地の図書館との定期購読契約および、研究成果の発表に際して徴収される「論文処理費用」と呼ばれる掲載料によって収益を上げている。科学研究および図書館運営にかかる費用の多くは公的資金に依存しているため、結果として政府財政への負担が拡大している。加えて、市場競争の制約を十分に受けない独占的構造が形成され、その結果、科学的な付加価値を提供することなく、研究成果の公表が高額化しているのが現状である。
このような状況を是正するために、研究成果の公表に要する費用も、研究活動と同様に公的に資金負担され、適切に管理されるべきであると著者らは主張する。提案された方式では、学術誌の運営および財源管理は、公募により予算を獲得した専門家集団や関係組織によって担われることになる。このようにして、研究者が費用の負担なく研究成果を公表し、誰もが自由にそれを閲覧できる体制が実現する。このモデルは、「ダイアモンド・オープン・アクセス・モデル」と呼ばれている。
本モデルにおいては、学術誌の運営は、専門家集団、アカデミー、または研究に関与する公的組織からの申請に基づいて行われる。申請に対する評価は、研究費配分の審査を担う助成機関において確立している基準を適用することが想定されている。さらに、必要な予算規模を的確に見積もるために、学会誌を発行している専門団体の代表者を評価プロセスに加えることも推奨されている。新たな資金制度の導入に向けて、まずはドイツ国内においてパイロットプロジェクトを公募すべきである。また、国際的な共同資金調達体制の構築に向け、超国家的なワーキンググループの設置も提案している。
本提案に関連して、6月2日および3日の両日にわたり、「研究成果刊行のための財源負担の将来」と題するシンポジウムが開催される予定である。このシンポジウムにおいては、今回の提案に関して、制度的・財政的・法的・専門分野的な諸課題を特定し、議論が交わされる予定である。本シンポジウムは、学術誌を通じた研究成果発表の新たな支援体制の構築に向けて、重要な契機となることが期待されている。
[DW編集局]