[本文]

国・地域名:
EU
元記事の言語:
英語
公開機関:
欧州委員会(EC)
元記事公開日:
2025/05/28
抄訳記事公開日:
2025/06/24

欧州委員会、「スタートアップ・スケールアップ戦略」を発表

Commission launches ambitious Strategy to make Europe a startup and scaleup powerhouse

本文:

(2025年5月28日付、欧州委員会(EC)の標記発表の概要は以下のとおり)

欧州委員会は2025年5月28日、グローバルな技術志向型企業の創出と成長において、欧州を最適な拠点とすることを目的とした「EUスタートアップ・スケールアップ戦略 スタートアップとスケールアップのために欧州を選ぶ(EU Startup and Scaleup Strategy Choose Europe to Start and Scale)」を発表した。本戦略は、フォン・デア・ライエン欧州委員長が発表した「Choose Europe」という広範なイニシアチブと一致している。

スタートアップ・スケールアップ企業は、イノベーションと持続可能な経済成長の原動力であり、高度な雇用の創出、投資誘致、さらには戦略的依存の軽減といった観点から、欧州の将来に不可欠である。しかし、十分な基盤があるにもかかわらず、多くの企業はいまだに、研究アイデアの市場展開や、EU域内での事業展開に苦労している。これらの課題の克服を目指し、本戦略は起業から規模拡大、成熟、さらには事業の成功に至るまで、企業のライフサイクル全体を通じて一貫した支援を提供するものである。

スタートアップ・スケールアップ戦略では、スタートアップ・スケールアップ企業が直面する主要なニーズを特定し、以下の5つの主要分野において一連のアクションを提示している。

・イノベーションに適した制度環境の整備
2025年5月の単一市場戦略で示されたように、スタートアップ・スケールアップ企業は、制度や規制の断片化の解消、行政手続きの簡素化、そして単一市場におけるシンプルで支援的な制度設計を必要としている。欧州委員会は、規則の簡素化と失敗コストの低減に資する新たな枠組みを提案している。欧州ビジネスウォレット(European Business Wallet)は、すべての経済主体に統一されたデジタルIDを提供することで、EU域内の公的機関とのシームレスなデジタル連携を可能にする。また、今後施行予定の「欧州イノベーション法(European Innovation Act)」は、規制サンドボックスの促進を通じてイノベーション促進を支援する。

・資金調達環境の改善
2025年3月に戦略が公表された「貯蓄・投資同盟(Savings and Investments Union)」の推進は、EU域内の資金調達と投資の機会を拡大する鍵となる。貯蓄・投資同盟を補完するため、スタートアップ・スケールアップ戦略では、欧州イノベーション会議(EIC)の拡充と簡素化、ディープテック・スケールアップ企業の資金調達ギャップを埋める「スケールアップ・ヨーロッパ基金(Scaleup Europe Fund)」の創設、大型機関投資家によるEUファンド、ベンチャーキャピタルファンド、未上場スケールアップ企業への投資を促す「欧州イノベーション投資協定(European Innovation Investment Pact)」の策定を掲げている。

・市場展開と事業拡大の支援
研究段階から市場への移行を加速するため、欧州の大学エコシステムの接続を支援する「欧州スタートアップ・スケールアップ・ハブ(European Startup and Scaleup Hubs)」を含む「ラボからユニコーンへ(Lab to Unicorn)」と題するイニシアチブを導入する。これには、知的財産(IP)の商業化やスピンオフ創出時のライセンス、ロイヤルティ、収益分配、資本参加に関する学術機関とその発明者のための青写真が含まれる。また、知的財産(IP)関連の国家補助金(State aid)ルールに関する指針も提供される。

・トップ人材の誘致と定着
優秀な人材を欧州に呼び込み、定着させるため、「ブルー・カーペット(Blue Carpet)」イニシアチブを導入する。特にアントレプレナーシップ教育の充実、従業員ストックオプションに関する税制の改善、国境を越えた雇用の促進などに重点を置いている。欧州委員会はさらに、ブルーカード指令(Blue Card Directive)の促進にも努める。

・インフラ・ネットワーク・サービスへのアクセス促進
スタートアップ・スケールアップ企業が研究・技術インフラにアクセスする際のアクセス条件と契約条件を簡素化し、調和させるため、「産業ユーザーのためのアクセス憲章(Charter of Access for industrial users)」の策定が提案されている。

進捗状況は、グローバルな主要業績指標(KPI)を用いてモニタリングされる。欧州委員会は、2027年末までに戦略の実施状況を報告する予定である。

[DW編集局]