[本文]

国・地域名:
ドイツ
元記事の言語:
ドイツ語
公開機関:
ヘルムホルツ協会(HGF)
元記事公開日:
2025/06/13
抄訳記事公開日:
2025/07/09

生物学的海洋CO₂除去技術(mCDR)は海洋酸素を脅かす

Was gut für das Klima ist, ist nicht automatisch gut für den Ozean

本文:

(2025年6月13日付、ヘルムホルツ協会(HGF)の標記発表の概要は以下のとおり)

ヘルムホルツ・海洋研究センターGEOMARのオシュリース(Andreas Oschlies)教授が率いる国際研究チームが、”Environmental Research Letters”誌で発表した研究によると、海洋のCO₂吸収量を高める手法は気候危機への対応策とされている一方で、特に海中でバイオマスを分解する生物学的手法は、海洋中の酸素濃度を著しく低下させるおそれがあることが明らかになった。同チームは、こうした手法の有効性を評価する際には、酸素への影響を不可欠な指標として考慮することが必要であると結論づけている。

気候変動の緩和策においては、海洋の酸素損失の防止も同時に求められる。しかし本研究は、生物学的プロセスを基盤とする海洋CO2除去技術(mCDR)が、かえって海洋中の酸素損失を加速させ得ることを示している。

本研究では、ユネスコの「グローバル・オーシャン・オキシジェン・ネットワーク(GO2NE)」の科学者らと連携し、地球規模の理想化された数値モデルを用いたシミュレーションにより、海洋施肥、藻類バイオマスの沈降、深層水の湧昇導入などの各種mCDRが、海洋中の酸素濃度に及ぼす直接的および間接的な影響を解析した。

中でも、海洋施肥や大型藻類の培養・沈降処理などの手法は、海洋の酸素消費を顕著に増加させると判明した。オシュリース教授は「モデル計算では、一部の方法では地球温暖化の抑制によって得られる酸素増よりも4倍から40倍もの酸素が失われる可能性がある」と指摘する。

研究対象とした全手法のうち、唯一、大規模なマクロアルガ(大型藻類)の養殖と収穫による手法のみが、過去の酸素減少を取り戻し、それを上回る酸素増加が見込まれるとされた。この手法では、栄養塩を含むバイオマスを海洋外に取り出すため、追加的な酸素消費が発生しない。ただし、栄養塩の除去は海洋生態系の生物生産性に負の影響を及ぼす懸念がある。

こうした結果を踏まえ、研究者らは今後あらゆるmCDRの実施において、海洋酸素濃度の継続的かつ体系的なモニタリングを行い、その適否を評価する際には酸素への影響を不可欠な指標とするよう強く求めている。

[DW編集局]