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- 国・地域名:
- ドイツ
- 元記事の言語:
- ドイツ語
- 公開機関:
- ドイツ工学アカデミー(acatech)
- 元記事公開日:
- 2025/06/11
- 抄訳記事公開日:
- 2025/07/10
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ドイツ・欧州の技術主権に不可欠なチップ設計の重要性とオープンソース化の可能性
Proprietär, hybrid oder quelloffen in die Zukunft der Chipentwicklung?
- 本文:
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(2025年6月11日付、ドイツ工学アカデミー(acatech)の標記発表の概要は以下のとおり)
ドイツにとって、マイクロエレクトロニクスは産業競争力と技術革新を支える国家戦略上、不可欠な基盤技術である。中でも重要な構成要素がチップ設計であるが、設計ツールの大半は少数企業により独占されており、ドイツおよび欧州の技術主権とイノベーション能力に深刻な制約をもたらしている。これに対し、オープンソースの設計ツールは、より高い自立性を確保するための有力な選択肢となり得る。acatechは、大学・産業界・政策当局の役割を含め、この課題を巡る成果報告および討論を実施した。
acatechのエッカート(Prof. Claudia Eckert)次期会長は、技術主権の重要性とともに、社会的注目が相対的に低いチップ設計の価値を再認識すべきだと強調した。
acatechが主導するプロジェクト「主権的チップ開発に向けたオープンソース設計ツール」の成果発表では、オルデンブルク大学のネーベル(Prof. Wolfgang Nebel)教授とエアランゲン=ニュルンベルク大学のヴァイゲル(Prof. Robert Weigel)教授が、マイクロエレクトロニクスの経済的重要性に触れつつ、チップ設計は製造工程に先立つ上流工程であり、全体の付加価値の約6割がこの段階で生み出されていることを指摘した。
ネーベル教授は、現在のツール市場が三社のグローバル企業に支配されている実態に触れ、これが柔軟性と透明性を欠く要因であり、スタートアップや中小企業にとって障壁となっていると述べた。一方、オープンソースの手法は、量子技術など将来の応用を見据えた柔軟かつ低コストな代替案となり得ると評価した。
ヴァイゲル教授は、ツールの技術的成熟や標準化、産業プロセスへの統合といった課題を認めつつ、教育・研究分野での導入や政策的支援により、持続可能な設計エコシステムの形成が期待できると述べた。特に、オープンなインターフェースが、既存ツールとのハイブリッド運用を可能にする鍵であると指摘した。
今後の普及に向けては、①教育・人材育成、②産業界の導入、③政策支援という三領域での連携が重要であるとし、応用フォーラムの創設や、電子設計自動化(EDA: Electronic Design Automation)ツールの開発を支援するバウチャー制度など、具体的な施策も提案された。
討論の締めくくりでエッカート次期会長は、地政学的リスクや輸出規制といった外的制約も踏まえ、チップ設計の自律性確保は欧州全体にとって戦略的に極めて重要な課題であると述べた。議論の中で産業界側から具体的な要望も示され、EUレベルでこのテーマを推進しようとする初期的な動きが確認されたことにより、本プロジェクトで抽出された重点項目の意義が裏付けられた。
[DW編集局]