[本文]

国・地域名:
フランス
元記事の言語:
フランス語
公開機関:
国立科学研究センター(CNRS)
元記事公開日:
2025/06/25
抄訳記事公開日:
2025/07/22

スピントロニクスの産業化を加速するSPINfabパイロットライン始動

Lancement de la ligne pilote spintronique SPINfab, pour une électronique plus performante et plus verte

本文:

(2025年6月25日付、国立科学研究センター(CNRS)の標記記事の概要は、以下のとおり)

原子力・代替エネルギー庁(CEA)、CNRS、およびグルノーブル・アルプ大学(UGA)は6月25日、学術研究と技術研究をつなぎ、環境負荷低減に貢献する「グリーン・エレクトロニクス」の開発加速を目指す学術向けパイロットライン「SPINfab」を発足した。「SPINfab」は、フランス及び欧州の主権確保に資する戦略的な学術・産業エコシステムの強化を目的とするものである。

スピントロニクスは、電子の電荷に加えてスピンを活用する革新技術である。グリーン・エレクトロニクス分野における真の技術革命とされ、データ貯蔵とメモリ内計算、低消費電力センサー、さらには省エネ型人工知能(AI)やIoTの発展を大きく促進する。このパイロットラインは、先進スピントロニクス材料の製造専用に設置された。

SPINfabは、国家・地域圏プロジェクト契約(CPER)、欧州地域開発基金(FEDER)、オーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏などから計1,150万ユーロの支援を受け、CNRS、CEA、UGAの研究機関、欧州、国家、地域、地方自治体の強力な支援の下に推進される。

◇学術研究と技術研究をつなぐ中核基盤

SPINfabは、スピン研究プログラムなどに基づく学術研究と、応用技術開発とをつなぎ、特定用途において、研究室で開発された技術の成熟度(TRL 3~5)向上を図る。この新たなラインは、地域におけるナノ製造ツール群を強化するとともに、CEAのLETI研究所の応用分野とも高い互換性を有する。

このパイロットラインには、スピントロニクスデバイス向けの複雑な多層材料の堆積を可能とする国内唯一の薄膜堆積システム、磁性材料の加工に特化したプラズマエッチング装置という2基幹設備が整備された。

◇産業界のニーズに応える製造基盤

欧州は、巨大磁気抵抗効果(2007年ノーベル物理学賞)などの先駆的成果を背景に、スピントロニクスの分野で世界をリードしてきたが、産業規模への展開に必要な高度な製造インフラが不足していた。一方、アジアや米国では、巨額な公的投資により専用プラットフォームが整備され、グローバル企業の技術ロードマップにスピントロニクス部品が組み込まれつつある。SPINfabは、フランスおよび欧州の産業・技術主権強化に向けた取り組みである。

この取り組みは、地域に根差す豊かなエコシステムを活用する。SPINTEC(CEA、CNRS、UGA)、マイクロエレクトロニクス技術研究所(CNRS、UGA)、ネール研究所(CNRS)などの国際的研究機関、ソイテックや数多くのスタートアップ群が産業基盤を形成する。国内外の機関との連携や、研究インフラネットワークへの参加も通じて、SPINfabは地域エコシステムへの統合を深める。

また、このプロジェクトは、学生や技術者に最先端設備へのアクセス機会を提供し、重点投融資計画「フランス2030」に沿って、地域を「未来の職業」に関する専門知識拠点として確立する取り組みにも貢献する。

[DW編集局]