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- 国・地域名:
- ドイツ
- 元記事の言語:
- ドイツ語
- 公開機関:
- ヘルムホルツ協会(HGF)
- 元記事公開日:
- 2025/06/19
- 抄訳記事公開日:
- 2025/07/24
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欧州環境規制を巡る科学者の役割と誤情報対策 ― 自然再生規則と農薬規制の事例分析
- 本文:
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(2025年6月19日付、ヘルムホルツ協会(HGF)の標記発表の概要は以下のとおり)
生物多様性の損失を食い止め、地球温暖化を抑制するためには、政治的な決断が必要である。しかし、こうした政策決定はしばしば反発を招き、オルタナティブ・ファクト(事実に反する主張)をも含む公の議論が展開される。科学者は、こうした状況にどのように対応し、誤情報が政策に与える影響をいかに低減できるのか?学術誌「People and Nature」に掲載された意見記事において、この課題を論じた筆頭著者であるペール博士(Dr. Guy Pe’er/ヘルムホルツ環境研究センター(UFZ)およびドイツ生物多様性研究センター(iDiv)所属)にインタビューした。
2022年に欧州委員会が「グリーン・ディール」の一環として提案した2つの規則、自然再生に関するEU規則(NRR)と植物保護製品の持続可能な使用に関するEU規則(SUR)、をめぐる議論において、科学者が果たした役割は何か?私たちは、これらの規則に反対する主張と科学的証拠を比較し、誤情報を暴く公開書簡として公開することを考案した。多様な分野の専門家が証拠を収集・整理し、最終的に6,000人以上の科学者が書簡に署名した。欧州レベルのメディアや政策決定者に提示し、バランスの取れた科学的根拠と明確な論拠を通じて、議論の二極化を緩和できたと確信している。
EU議会ではNRRが採択されたが、SURは否決された。フェイクニュースがこれに与えた影響は何か?SURによる農薬削減は、化学物質の使用の種類・範囲・使用時期などに制限を課すため、農業関係者の間で抵抗が生じやすく、怒りも容易に煽られた。
規則反対派は、いかなる疑似科学的主張を行ったのか?彼らは、これらの規制により食料生産が減少し、食料安全保障が脅かされると主張したほか、農業や漁業などの雇用が失われると訴えた。
科学者たちは、科学的証拠によりフェイクニュースをどの程度覆せたのか?私たちの公開書簡と論拠は、NRR策定プロセス全体に影響を及ぼした。保守派による反対論はNRRとSURでほぼ同様であったにもかかわらず、NRRでは採択に至ったが、SURでは成功しなかった。
科学者は将来の環境政策論争から何を学ぶべきか?NRRの採択例は、誤情報が発生し、それが科学者の専門分野に関する場合、科学者が介入する意義を示している。科学者がバランスのとれた科学的証拠の提供者としての役割を堅持する限り、その声に耳を傾けてもらえる可能性は十分にある。
[DW編集局]