[本文]
-
- 国・地域名:
- ドイツ
- 元記事の言語:
- ドイツ語
- 公開機関:
- マックスプランク協会(MPG)
- 元記事公開日:
- 2025/06/17
- 抄訳記事公開日:
- 2025/07/17
-
プロキシマ・フュージョン社、欧州初のステラレーター型核融合発電実現へ 民間最大規模の資金調達完了
- 本文:
-
(2025年6月17日付、マックスプランク協会(MPG)の標記発表の概要は以下のとおり)
ミュンヘンのスタートアップであるプロキシマ・フュージョン社は、ステラレーター型核融合発電所の主要構成要素の開発資金として、1億3,000万ユーロを調達した。これは欧州における核融合分野への民間投資としては過去最大規模であり、この方式による世界初の核融合発電所が2030年代に建設される見通しである。
今回の資金調達により、プロキシマ・フュージョン社が確保した公的・民間資金の総額は1億8,500万ユーロを超えた。同社のCEO兼共同創業者であるフランチェスコ・シオルティーノ氏は、「核融合は、世界のエネルギー依存を天然資源から技術主導へと転換する真の戦略的機会となった」と強調する。また、同社は、世界有数の研究機関から集結した技術者や製造の専門家による優れたチームとともに、2030年代の欧州初の核融合発電所実現に向けた動きを加速する好機を得たとしている。
2023年4月に設立されたプロキシマ・フュージョン社は、今後もマックスプランク・プラズマ物理学研究所(IPP)との緊密な連携を維持する。EUやドイツ、フランス、英国、イタリア各国政府による取り組みに支えられ、核融合は欧州のエネルギー主権、産業競争力、CO2中立型経済成長を実現する鍵となる基盤技術として認識されつつある。
投資会社チェリー・ベンチャ-ズのフィリップ・デームス氏は、「我々は、人類が直面する最大の技術的挑戦に挑む起業家を支援している。環境負荷のない無限のエネルギー源という技術的挑戦に匹敵するものはほとんどない。プロキシマ・フュージョン社は欧州の科学的優位性と商業的野心を融合させ、世界屈指の核融合企業へと成長しつつある。これは欧州が誇る最高水準のディープテックであり、欧州の世界的な技術的リーダーシップを示す象徴だ」と述べた。
プロキシマ・フュージョン社は、IPPのヴェンデルシュタイン7-Xステラレーター実験で得られた成果をもとに、高度なシミュレーション技術と高温超伝導(HTS)技術を駆使している。今回の資金により、同社は2027年までにHTSステラレーターの主要機器である「ステラレーター・モデル・コイル」を完成させ、HTS技術に伴うリスクを低減し、欧州の技術革新を推進する。また、同社は実証炉「アルファ」の建設予定地について欧州各国政府と協議を進めており、2031年の稼働開始を目指す。この施設は、プラズマの閉じ込めや加熱に要するエネルギーを超える発電を達成することを目標とする。
シオルティーノCEOは、「核融合エネルギーは実験段階から産業化段階へと移行した。今回の資金調達は我々のアプローチの正しさを示し、クリーンな核融合エネルギーの実現に不可欠なハードウェア開発を加速するための基盤となる」と総括した。
[DW編集局]