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- 国・地域名:
- EU
- 元記事の言語:
- 英語
- 公開機関:
- 欧州委員会(EC)
- 元記事公開日:
- 2025/07/16
- 抄訳記事公開日:
- 2025/07/17
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欧州委員会、次期多年度財政枠組み案を発表 次期Horizon Europeは1,750億ユーロ規模で提案
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欧州委員会は2025年7月16日、総予算約2兆ユーロに上る2028年から2034年の多年度財政枠組み(MFF)を発表した。地政学的・経済的な構造変化を受けて、欧州委員会はより合理化され、柔軟性があり、インパクトのあるEU予算に向けて根本的な再設計を提案している。
欧州委員会は、新たな自主財源の導入と既存財源の調整を提案し、加盟国予算の負担軽減と年間585億ユーロの資金調達を実施する。
MFFでは、EU予算の受益者に関する透明性と審査が強化され、一元化されたデータベースで情報が公開される。
競争力、研究、イノベーションを通じて繁栄を推進
新たに創設される「欧州競争力基金(European Competitiveness Fund)」は、レッタ報告書やドラギ報告書で推奨されているとおり、単一市場全体に利益をもたらす戦略的技術に投資を行う。申請者に対して単一の窓口を提供することで、EUの資金調達を簡素化・迅速化し、民間投資と公的投資を促進する。次の4つの分野に重点が置かれる。
▽クリーン移行と脱炭素化
▽デジタル移行
▽ヘルス、バイオテクノロジー、農業、バイオエコノミー
▽防衛、宇宙
競争力基金は民間資金を呼び込むことで、1ユーロあたりのインパクトを最大化する。
EU研究枠組みプログラムであるHorizon Europeは1,750億ユーロ規模で提案されており、競争力基金と密接に連携して世界トップクラスのイノベーションを継続的に支援する。Horizon Europeと競争力基金は、研究プロジェクトの全投資段階(企画から拡大段階まで)を支援し、潜在的な受益者のコストと資金配分にかかる時間を削減する。
人々を守り、新たな課題に立ち向かうための備えとレジリエンスの構築
欧州委員会は、深刻な危機がEUを襲った際に加盟国へ最大4,000億ユーロの融資を可能にする新たな危機対応メカニズムを提案している。欧州競争力基金は産業能力の開発と最先端技術への資金調達を通じて、主要分野と主要技術におけるEUの戦略的自律性と危機への準備を強化する。競争力基金の防衛・宇宙分野には、1,310億ユーロが割り当てられる。新たなMFFではEU域外との国境を強化し、域内の安全保障を高めるために、移民の管理に配分される資金も増額となる。
世界における強い欧州のためのパートナーシップの構築
新たなMFFでは、対外行動の資金調達を簡素化するため、2028年から2034年までに2,000億ユーロを投じる「グローバル・ヨーロッパ(Global Europe)」が創設される。EUの予算はEU加盟候補国への支援強化や加盟準備に充てられるようになり、新たな危機や予期せぬニーズに対応するための150億ユーロの専用予備資金を確保する。
新たな自主財源
欧州委員会は、現代的で多様な収入源を確保するため、5つの新たな自主財源を提示する。EUはNextGenerationEUの下で借り入れた資金を返済し、EU予算への各加盟国による拠出を抑制しながら、EUの優先事項に資金を提供する手段を確保する。5つの新たな自主財源とは、EU排出量取引制度(ETS)、炭素国境調整メカニズム(CBAM)、電子廃棄物への課税、タバコ製品への課税、欧州コーポレート・リソース(CORE:Corporate Resource for Europe)である。
次のステップ
新たなMFFは今後、EU理事会で議論される。新たな自主財源についてはEU理事会での全会一致と各加盟国の憲法に則った承認が必要である。
[DW編集局]