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- 国・地域名:
- フランス
- 元記事の言語:
- フランス語
- 公開機関:
- 国立科学研究センター(CNRS)科学委員会
- 元記事公開日:
- 2025/09/17
- 抄訳記事公開日:
- 2025/10/06
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Key Labsは「良案にあらず」 CNRS科学委が答申
- 本文:
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フランス国立科学研究センター(CNRS)の施策について助言などを行うCNRS科学委員会(CoNRS)は9月17日、CNRSが研究ユニットの選抜を進める「Key Labs」(キー・ラブス)構想について、「現下の課題を解決する良案とは言えない」として反対する答申を行った。この構想をめぐっては、すでに多くの研究機関や高等教育機関が疑問や反対の声を上げており、今回の答申で実現がさらに遠のいた形だ。
Key Labsは、CNRSが他の研究機関や高等教育機関などと共同運営する全国約850か所の「混成研究ユニット」(UMR)のうち、4分の1程度を選抜して資金を傾斜配分する構想。CNRSによると「卓越したラボを手厚くサポートして価値を最大化する」ことが目的といい、所属研究者の被表彰実績、欧州研究会議(ERC)への貢献、フランス政府の優先研究プログラム(PEPR)への参加実績などを選考基準にするとしている。ただUMRは基礎研究なども多数担っており、その運営に資金の競争原理を持ち込むことには根強い反対論があることから、アントワーヌ・プティCNRS理事長が今年2月に構想を一時的に停止し、外部有識者らで作るCoNRSに諮問していた。
今回の答申で、CoNRSは「研究エコシステムにおいては、競争よりもむしろ協調を促すべきだ」と指摘するとともに、「CNRSの研究者らはこれまで研究の自由を享受しており、それが外国から見たCNRSの魅力の一つだ」とも言及。そうした「魅力」を上げていかなければならない課題などを考慮した場合に、Key Labsは「良案とは言えない」と断じた。
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そのほかにもCoNRSは今回の答申で、CNRSに対して13項目、政府の高等教育・研究担当大臣に対して9項目、それぞれ提言を行っている。主な内容は次の通り。
【CNRSへの提言事項】
▽あらゆる領域において常に新しい目的やアプローチなどを立てていくよう努めること
▽研究の多様性、研究エコシステムの複数領域化、さらには研究のネットワークを担保すること
▽国内各地に散らばる複数の研究拠点間が協力できるよう調整すること
▽複数の機関間の戦略的な協力関係を深めさせること
▽公的研究機関の新設については関係機関全体からのフィードバックの反映に努めること
▽UMRを支援すること
▽ボトムアップ型研究を支援すること
▽「社会的」課題が複数ある場合においてそのイニシアティブ形成に介入しないこと
――など計13項目【高等教育・研究担当大臣への提言事項】
▽CNRSの国家的な使命をより明確にすること
▽複数の機関が協業するうえでの障壁を取り除くこと
▽特にUMRを中心とする各研究ユニットの体制を強化すること
▽UMRの運営規則を簡素化すること
▽プログラムセンター(Agence de programme)にできることとできないことを明確にすること
▽あまりにも対象の狭いテーマ設定でのプログラム運営を避けること
――など計9項目 [DW編集局]