[本文]
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- 国・地域名:
- フランス
- 元記事の言語:
- フランス語
- 公開機関:
- 経済・財務・産業・デジタル主権省
- 元記事公開日:
- 2025/10/14
- 抄訳記事公開日:
- 2025/10/17
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26年当初予算案は微増へ 議会審議は不透明
- 本文:
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政府は14日、前年当初予算比1.0%増となる、総額5,882億5,889万ユーロ(当該年支払額ベース。1万ユーロ未満を四捨五入表記。以下全て同じ)の2026年政府一般会計予算案を発表した。高等教育・研究関係も含めて、多くの事業は微増となっているが、議会各会派の理解を得て審議が順調に進むかどうかは不透明な情勢だ。
高等教育・研究関係では、「研究・高等教育費」は314億7,527万ユーロ(前年当初予算比1.8%増)で、このうち複数年研究計画法(LPR)の対象部分は270億2,153万ユーロ(同0.7%増)だった。LPRをめぐっては、財政難を理由に、今年春頃から高等教育・研究担当省(当時)が削減や中止も視野に入れて検討を進めていたとされる。だが今後の議会審議の行方が見通せないため、最終的に増額を確保できるかどうかは予断を許さない。
また5か年投融資計画「フランス2030」の財源である「2030年のフランスのための投資費」は54億9,783万ユーロ(同4.4%増)となった。
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【解説】
現在のフランス政府が国会での予算案審議に臨むにあたっての難しさは、「年々膨張する累積債務の圧縮」と「予算削減に反対する議会各会派との調整」という、いわば二律背反に挑まざるをえないことにある。
フランスの公共部門の累積債務は2023年に3兆ユーロを突破し、今年の第1四半期(1~3月)末時点では3兆3,454億ユーロとなった。これに危機感を抱いたバイルー首相(当時)は7月、26年だけで前年当初予算の7.5%にあたる438億ユーロの歳出を削減するとともに、翌年以降も緊縮財政を続けることで、現在は5%を超えている財政赤字の対GDP比を、29年には3%に抑える構想を示した。だが議会各会派や国民から強い反発を受け、下院の「不信任」決議を経て9月、バイルー氏は辞任を余儀なくされた。
後を継いだルコルニュ内閣が発表した今回の予算案は、多くの予算が微増とされており、バイルー前内閣の削減構想を事実上白紙に戻したといえる。この結果、議会審議のハードルは下がる可能性があるが、一方で仮に原案に近い状態で予算案が可決・成立すれば、累積赤字がさらに膨らむことになる。今回発表された予算案にその点を正面から論じた”処方箋”は見当たらず、問題解決への道筋がついているとは言いがたい。
さらにフランスでは24年夏の下院総選挙により政府と議会与党がねじれ、25年予算は前年末までに成立せずに越年し、審議が今年2月までずれ込んだ。ねじれは現在も変わっていないため、26年予算も越年する可能性があり、政局と議会審議の混乱は当面続くと考えられる。
(フランス担当フェロー・内田遼)
[DW編集局]