[本文]

国・地域名:
ドイツ
元記事の言語:
ドイツ語
公開機関:
ドイツ工学アカデミー(acatech)
元記事公開日:
2025/10/15
抄訳記事公開日:
2025/12/01

メルツ連邦首相、acatech記念式典で研究開発とイノベーション移転の加速を訴え

Bundeskanzler Friedrich Merz auf acatech Festveranstaltung: Forschung und Entwicklung entscheiden über die Zukunft unseres Landes

本文:

(2025年10月15日付、ドイツ工学アカデミー(acatech)の標記発表の概要は以下のとおり)

「ドイツの将来、欧州の将来はどのようなものか、私たちがどのように自由で、豊かで、安全な生活を送れるのかは、研究と開発の進展にかかっている」とメルツ連邦首相はacatechの記念式典で述べた。飛躍的イノベーション機構(SPRIND)のラグナ・デ・ラ・ヴェラ理事長は「創業時代2.0」と題したロードマップを提示し、acatech会長エッケルトと共同会長ウェーバーは、イノベーションの力強さへの飛躍を呼びかけた。

学界、産業界、政界から500人を超える参加者を前に、メルツ連邦首相は技術イノベーションの意義を次のように強調した。「ドイツと欧州の強さは、社会に資する目標へと技術進歩を導く意思と能力にある。acatechは、政治と社会に対し、汎党派的・学際的・分野横断的な助言を幅広く行い、この意味で真の進歩に貢献する存在である。私たちは、acatechに集積された専門知をこれまで以上に必要としている。なぜなら、ドイツと欧州の将来がどのようなものとなるのか、いかに自由に、豊かで、安全な社会を築けるのかは、研究開発の進展にかかっているからだ。」

続けてメルツ首相は、ドイツの課題はイノベーション移転にあると指摘した。「ドイツは卓越した基礎研究を行っており、その研究水準は世界的な模範である。しかし、研究成果を応用や製品開発、価値創造へと移転する段階では、なお改善の余地がある。連邦政府は、まずは2030年までに、政府と民間が合わせてGDP比年3.5%以上を研究開発に投じるという野心的な目標を掲げている。併せてハイテク・アジェンダはキーテクノロジーに重点を置き、その支援を技術的自律の確立に向けて集中的に展開している。」

ドイツがその先端的研究の成果をいかにイノベーションの成功に結びつけるかについて、SPRINDのラグーナ所長は「創業時代2.0」という構想を示した。彼によれば、多くの成功した企業は、これまでの成功が新たな道を阻むという「イノベーションのジレンマ」に陥っている。イノベーションには秩序よりも「カオス」が必要であり、トップダウンによる統制ではなく、幸運な偶然を許容する文化が欠かせないと述べた。続いて、起業家賞を受賞したロボティクス関連のスタートアップが紹介された。

ディスカッションでは、エッケルト会長が「ドイツは研究と技術、隠れたチャンピオン、産業界の世界的リーダー、成功した企業やディープテック系スタートアップの国であり、こうした力をさらに活かす必要がある。重要なのは、創業のダイナミクスとともに既存産業のイノベーション力を強化し、長期的視野で研究を推進することだ。核融合や量子、マテリアル、気候適合型エネルギー技術などの分野における飛躍的成果には、長い準備期間が不可欠である。」と述べた。続いてウェーバー会長は、「ドイツはあらゆる分野を一様に支援するのではなく、キーテクノロジーに焦点を定め、強みと弱みを科学的に分析したうえで、戦略的目標を設定し、明確なロードマップに沿って推進すべきである。」と語った。

[DW編集局]