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- 国・地域名:
- フランス
- 元記事の言語:
- 英語
- 公開機関:
- HCÉRES
- 元記事公開日:
- 2025/12/11
- 抄訳記事公開日:
- 2026/02/09
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INSERMは「複数年の展望を」 HCÉRESが15項目推奨
ASSESSMENT REPORT OF INSERM(NATIONAL INSTITUTE FOR HEALTHAND FOR MEDICAL RESEARCH)
- 本文:
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政府の独立評価機関、研究・高等評価高等審議会(HCÉRES)は2025年12月、国立保健医学研究所(INSERM)の評価報告書を公表し、「プログラム運営機関と研究機関としてのINSERMを明確に区別し、分離すべき」「予算について複数年の明確な展望を確立すべき」「外国の専門家の助言を体系的に取り入れて国際水準の評価を実践し、定量的指標に頼った研究者評価から脱却すべき」など15項目を提言した。同審議会によるANRの公式評価は2020~21年期以来。
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同審議会の評価結果は下記の通り。
◇INSERMの強み
• フランス、欧州、そして国際レベルにおいて卓越性で高い評価を得ている。
• 有能な常勤研究者の競争的に選考し、新規採用研究者の約27%がフランス国外出身の研究者である。
• イノベーションに強い取り組み、スピンアウト企業の創出、技術移転、民間企業との提携などの実績が顕著であり、高い専門性が認められる。
• EU資金による研究・イノベーションプログラムに積極的に参加している。
• 公共政策への貢献と科学の社会への定着に向け強く取り組んでいる。
• 優秀な科学者に対する魅力の向上を図るため、近年、給与面でしっかり取り組んでいる。
• プログラム運営機関としての機能が順調にスタートしている。◇INSERMの弱点
• フランスの保健研究エコシステムにおけるINSERMの位置付けと役割に関するビジョンが不明確である。
• プログラム運営機関としてのINSERMと、研究実施機関としてのINSERMという二つの役割を明確に区別する力量が不十分である。
• COVID-19危機から教訓を学ばず、将来のパンデミック発生に備えた文書を作成していない。
• 科学的な優先課題、EUプログラム参加を超えた欧州戦略、国際協力など多くの問題において明確な戦略が欠如している。
• フランス偏重の研究評価である。
• 内向き文化と変化への抵抗で、研究拠点および地域レベルでどのように大学が研究を主導するべきか展望を打ち出せていない。
• 研究ユニット運営におけるINSERMの役割に関する明確なビジョンが不足している。
• プログラム運営機関として成長させる観点から、明確な内部の組織化と再編が必要である。不十分な報告体制と目標設定メカニズム、脆弱な調整機能により経営陣の統制力が低下している。
• 予算と会計が不明確、かつ理解しづらく、加えて一貫して持続的な会計分析を行うことができないため、財務状況の持続可能性を評価することができない。◇
INSERMへの推奨事項は下記の15点である。
1. プログラム運営機関と研究実施機関としてのINSERMを明確に区別し、分離する。プログラム運営機関としてのガバナンス、目標、運営メカニズムを明確化し、限られた数の研究プログラムを優先することを目標とし、透明性の確保と、簡素化および細分化の解消に向けた機会を捉えることに細心の注意を払う。
2. 【政府およびINSERMに対して】プログラム運営機関としてのINSERM予算、そして研究実施機関としてのINSERM予算について、明確な複数年の展望を確立する。
3. 【プログラム運営機関としてのINSERMに対して】すべてのパートナーと連携し、医療研究プラットフォーム、および設備に関する一貫した国家戦略を策定するとともに、その実施に向けた共通ロードマップを確立する。【フランス政府に対して】最先端技術設備、データプラットフォーム、バイオバンク、コホート研究を含むプラットフォームに対し、一貫性のある持続的な資金支援を実施する。
4. 研究者評価に関する海外専門家の助言を体系的に取り入れ、国際比較を推進することによって国際水準の研究評価の文化と実践を発展させる。定量的指標に頼った研究者評価から脱却し、INSERMの使命に対するあらゆる貢献が適切に評価できるよう、取り組みを強化する。
5. 研究実施機関としてのINSERMに対して、明確な優先事項と、その実施に向けた明示的な方向性を含む具体的な科学的戦略を定義する。
• 今後5年間でINSERMを国際的な最高水準に引き上げることを目標に、意欲的な医療戦略を確立する。
• 医療研究におけるデータ・デジタル変革のリーダーとしてINSERMを位置付けるための意欲的な行動計画を策定する。6. 選定したいくつかの拠点における実験的取り組みを皮切りにして、健康研究拠点統一戦略を策定することを目指しつつ、拠点大学が主導し、かつ大学、大学病院、INSERMおよびその他のパートナー間で共有される、新たな拠点レベルでの「対話プラットフォーム」を構築する。
7. 大学との連携を強化し、パートナーシップを深化させるため、迅速かつ抜本的な措置を講じる。
• 大学と連携し、研究ユニットの責任者に権限を与え、意思決定への積極的な参加、ユニットの研究目標の達成に対する実質的な影響力、相当する資源の活用を含む指導的役割を果たす能力を強化する。
• 大学と連携し、共同研究ユニットの運営に関する明確な共管体制を確立する。
• 研究ユニットに対する資源配分に関する運営プロセスと決定を可能な限り現場に委ね、これらの決定が提携大学と協調して行えるようにする。
• INSERMの研究者が教育に貢献するよう奨励し、そのための支援手段を提供する。
• 管理データおよび情報の統合に向けた共通フレームワークをユニット、拠点および国のすべてのレベルで確立する。
• 大学拠点レベルで共通の目標と統合指標を設定する。8. 国内・国際レベルおよび拠点レベルで臨床研究におけるINSERMの役割を明確化する。プログラム運営機関として、臨床研究分野で最も有望な地域主導の取り組みを支援するプログラムを確立する。臨床研究に携わる医療従事者および研究者に対し、「インターフェース契約」や「ATIP-Avenirプログラム」助成金などの支援ツールを拡大する。
9. 子会社「INSERM Transfert」が持つ現行組織の効率性と専門性を慎重に維持しつつ、イノベーション戦略を策定・監視する真の能力をINSERMの中に確立し、この組織が内包する潜在的なリスクや欠点を軽減する方法を慎重に検討する。
10. 国内の提携大学と連携し、健康研究・イノベーション分野における欧州の主要な官民アクターとの戦略的パートナーシップの構築を含め、明確かつ目に見える欧州戦略を策定・実施し、重点的な優先事項を設定する。限定数に絞った世界トップクラスの機関との戦略的パートナーシップを優先して、一貫性のある国際戦略を策定する。
11. 専門家グループの報告書を現時点で起こっていることにより明確に関係付け、その意味を強く意識するため、意思決定プロセスと方法論を見直し、英語で公表するとともに、欧州域内での認知度を高める。
12. COVID-19危機に類似した将来のパンデミックの発生に備え、プログラム運営機関および研究実施機関としてのINSERMの目標、業務プロセス、コミュニケーション戦略をどのように適応させるべきかを記述した、主要な感染症対策ロードマップを策定する。
13. テーマ別研究所間の連携強化と相乗効果の増進を図るとともに、意思決定機関としての役員会の役割を強化しながら、内部組織を明確化し、全理事に対する明確な報告体制、目標設定、年次評価メカニズムを通じて経営管理を改善する。
14. 契約職員をINSERMの自らのビジョンと人事政策に完全に一体化させる。契約職員の職務とスキルの発展に向けた詳細な複数年計画を策定する。
15. 透明性が高く、かつ分かりやすい予算と会計を目指し、収入と支出の推移に関する詳細な複数年計画を策定し、分析的会計を緊急に実施する。
[DW編集局]