[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
大統領府科学技術政策局(OSTP)
元記事公開日:
2015/02/02
抄訳記事公開日:
2015/03/27

大統領の2016年度予算案、米国の未来(研究開発、イノベーション、STEM教育)に投資

President’s 2016 Budget Invests in America’s Future: R&D, Innovation, and STEM Education

本文:

2015年2月2日付の大統領行政府科学技術政策局(OSTP)の発表によれば、大統領の2016年度予算案では研究開発全体で1460億ドルを計上しており、成立済みの2015年予算からは80億ドル、つまり6%の増になる。本予算案の狙いは革新的な知識・技術の創造に直接的に最も寄与すると考えられる領域に対する財源であり、それが社会に利益をもたらし将来の事業や雇用の創出につながることを狙う。本予算案はまた、基礎・応用研究(研究・開発の「研究」部分)に670億ドルを計上しており、これは成立済みの2015年予算からは20億ドル(3%)の増になる。

本予算案が狙う主要な重点領域は次のとおりである。

・世界最高レベルの科学・研究への継続的取り組み
米国のイノベーションと経済競争力に不可欠な最先端の研究開発を継続して行うべく、エネルギー省(DOE)科学局に53億ドル強、国立科学財団(NSF)に77億ドル強を用意している。また国立標準技術研究所(NIST)には7億5500万ドルを計上している。上記3大基盤研究機構に対するファンディング総額は2015年のレベルを7億ドル超えて138億ドルとなっている。

・イノベーションへの投資
本予算案では安全保障能力のイノベーションに投資する。2016年度予算では国防総省(DOD)科学技術プログラムに123億ドルを提案している。また国防高等研究計画局(DARPA)には30億ドルを計上して、有望な技術の発掘に関してブレークスルーを助長するというDODの重要な役割を維持する。宇宙技術のイノベーション促進に関してはNASAに185億ドルを計上し、地上および宇宙でのイノベーションや科学的発見に関する大統領の構想を支援する。本予算案ではまた、複数省庁に跨る「国家ナノテクノロジー・イニシアティブ」に15億ドルなど、未来の産業に向けたイノベーションにも投資する。

・米国民の健康増進
本予算案では国立衛生研究所(NIH)の生物医学研究の支援に313億ドルを計上、これは2015年度より10億ドルの増である。何百万人もの米国人に影響があるアルツハイマー病、がん、その他の疾患に対する財源を増やしており、また我々の脳の理解に大変革をもたらそうという複数省庁に跨る「BRAINイニシアティブ」に対するNIHの分担分1億3500万ドルも含まれる。本予算案ではさらに抗生物質耐性菌対策で、保健福祉省(HHS)の各機関、DOD、退役軍人省(VA)、農務省(USDA)による12億ドルの政府全体投資も支援する。本予算案にはまた、個別の患者ごとに用意される予防、診断、治療方法の展開能力を促進する「精密医療医療イニシアティブ(Precision Medicince Initiative)」の立ち上げ目的で、HHSの3つの機関(NIH、FDA、ONC)の2億1500万ドルも含まれる。

・米国を仕事の集まる場所に
製造業の領域で本予算では、新たな先進製造技術の開発・実用化を支援することで、比較的小規模の製造業者が新技術を採用して競争力を高めるよう支援し、連邦政府研究機関から産業界への新技術移転を加速させる。2016年度予算案では、NSF、DOD、DOE、商務省(DOC)、その他省庁で先進製造業を直接支援する連邦政府の研究開発向けに24億ドルを計上する。これは先進製造業に関する国家戦略計画の目標および勧告とも一致する。45の製造技術イノベーション研究機関の全国ネットワークに対するファンディングを行う。

・国産クリーン・エネルギーへの投資
クリーン・エネルギー経済への移行を政府全体で加速させ、米国を21世紀のエネルギー産業における世界のリーダーたらしめるクリーン・エネルギー技術プログラムに、約74億ドルを計上する。DOEでは、研究開発を加速させ、重要なクリーン・エネルギー技術の利用拡大を図り、さらなるコスト削減を図るため、エネルギー効率・再生可能エネルギー局(EERE)に2016年度予算で27億ドルを計上する。本予算にはエネルギー高等研究計画局(ARPA-E)向けの3億2500万ドルが含まれる。

・気候変動への対応策
13の政府機関による「米国グローバル変動研究プログラム」(USGCRP)では、人類が誘発した自然プロセスの地球規模の変動およびそれに関連する影響や結果に対して、把握、評価、予測、対応の能力向上を図るべく、連邦政府による研究を統括する。本予算案にはUSGCRP向けの約27億ドルが含まれている。

・STEM能力を持った人材の育成
米国の競争力は米国におけるSTEM(科学・技術・工学・数学)教育を拡大・向上させる能力に依存する。本予算案ではSTEM教育プログラムに30億ドル強を投資する。これは2015年度比で3.6%増になる。

・民間セクター研究開発の支援
本予算案では試験・研究費税額控除の改定・恒久化を狙っている。

[DW編集局]