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- 国・地域名:
- 英国
- 元記事の言語:
- 英語
- 公開機関:
- 財務省
- 元記事公開日:
- 2015/03/18
- 抄訳記事公開日:
- 2015/03/27
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2015年度の科学技術イノベーション関連予算
- 本文:
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英国財務省の2015年3月18日付標記報道発表では、議会に対して行われたオズボーン(George Osborne)財務大臣による2015年度の予算演説の要約を伝えている。これを受けて同日、政府の公式ウェブサイト(https://www.gov.uk/government/publications/budget-2015-documents)に2015年度予算計画が公開されたところ、今後の英国の科学技術・イノベーション動向にとって重要な点の概要は以下のとおり。
2015年度の政府総支出は7,430億ポンド(2014年は7,320億ポンド)、総収入は6,670億ポンド(同年6,480億ポンド)の措置が予定されており、科学研究を担当するビジネス・イノベーション・技能省(BIS)の予算(歳出限度額)は174億ポンドとされた。これは、省庁全体予算の4.8%を占めている。2014年度のBIS予算が159億ポンド(見積)だったことから、2015年度予算は若干増加したことになる。
この174億ポンドの内訳を見てみると、資源予算(研究費や人件費等)が134億ポンド、資本予算(インフラ整備や施設建設等)が40億ポンドとなっている。2014年度では、資源予算が137億ポンド、資本予算が22億ポンドの見積であったことから、2015年度予算に関しては、資源予算は若干削減されるものの、資本予算はほぼ倍増される予定である。
省庁全体予算に占めるBIS予算の割合は、4.8%(2013年)→4.4%(2014年)→4.8%(2015年)と推移しており、横ばい状態であることが分かる。
2015年度予算計画で言及された科学技術・イノベーションに関する主な事項としては以下のとおり。
・北部パワーハウス構想(イングランド北部において多数の新規投資を実施し、北部の大都市を一体化して首都を補完する北部パワーハウスを建設する計画)
- マンチェスターにある先端材料科学に関する「サー・ヘンリー・ロイス研究所」の支部の支部を、リーズ、リバプール、シェフィールドに新設。先端材料は、医療、エネルギー、輸送など様々な産業で利用されており、今後の科学イノベーションにとって重要と思料される。
- デアズベリーのハートリー・センターにおいて、コグニティブ・コンピューティング(認知して考えるコンピュータ)センターを設立する。
- 高齢化が抱える課題に対する技術開発のため、ニューカッスル大学の高齢化情報・イノベーション・センターに2,000万ポンドの投資を行い、高齢者の生活の質の向上を図る一方で、医療サービスへの依存度を小さくすることを目指す。
- 研究用の国立原子力利用者施設(NNUF)を原子力技術用にも拡張するため、6,000万ポンドの投資を行う。・企業の研究・イノベーション支援のための研究開発費税額控除額を引上げ
英国では、2012-13年の研究開発費税額控除により、約1万5,000社が合計約14億ポンドの税軽減を受けた。2015年4月以降の研究開発費税額控除の割合増により、大企業は最大29%、中小企業は最大46%、研究開発費に係るコストを削減することが可能となる(2014年度予算編成方針より)。・科学のグランド・チャレンジ
世界トップレベルの新規科学インフラのための競争的資金(4億ポンド規模)が開始される。プロジェクトは産業界や慈善団体とのマッチングファンドも検討されている。・インテリジェント・モビリティの普及
インテリジェント・モビリティ研究開発に1億ポンドの政府投資が行われる。自動走行車技術や、通信技術のように広範なシステムが求められる技術の開発推進にとりわけ注力する。・フランシス・クリック研究所への追加支援
ウェルカム・トラスト、英国キャンサー・リサーチ、医学研究会議(MRC)、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンらは共同で、新たな医薬品や治療法の開発など、基礎から応用への転換を支援するためにフランシス・クリック研究所を建設中である(2015年度中に開設予定)。MRCの収益から最大で3,000万ポンドを同研究所に追加投資する。・大学院研究に対するサポート
国際レベルで競争力のある大学院研究のためのファンディング強化を見直す。この見直しの一環として、政府は、より広範囲な研究をサポートするクラウド・ファンディングも含めた共同ファンド案を提案する。同時に、大学院生(修士・博士課程)支援のために最大で2万5,000ポンドを所得連動型貸付の導入も開始する。 [DW編集局]