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- 国・地域名:
- ドイツ
- 元記事の言語:
- ドイツ語
- 公開機関:
- フラウンホーファー協会 システム・イノベーション研究所(ISI)
- 元記事公開日:
- 2015/10/19
- 抄訳記事公開日:
- 2015/11/19
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欧州VERAプロジェクト
- 本文:
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フラウンホーファー・システム・イノベーション研究所ISIの主導の下、10の研究機関がVERA(Forward Vision on the European Reserach Area)プロジェクトの枠組みの中で、欧州研究圏の4つの将来像を展開させた。これに関してISIは概略下記のような報道発表を行った。
EUの一つの目標は欧州研究圏(ERA)の創設であり、そこでは研究者と知識ならびに技術が障害なく循環できるというものである。たとえば、国境を越えて認められる修了資格や年金の請求権であろうとも、また明確に規定された知的所有権であろうとも、また知識、データ、研究インフラ等への簡単なアクセスであろうとも同様である。今世紀になって各国と欧州レベルの統合、協力、調整のために数多くのイニシアチブが生まれた。その中には、過去5年の間に増えたイノベーション活動が多く含まれている。
この研究圏が更に発展するとすれば、それは一つの欧州域内市場のように「完成」されるべきものなのか。しかしこれに関しては明確な答えはない。その上EFRは急速に変化している研究・イニシアチブ活動やグローバルな重要課題に直面する状況で、将来にむけて良好な態勢にあるのか否か、これも確実ではない。
VERAプロジェクトにおいて生まれた4つのシナリオは、2030年に想定される様々なリアリティを示している。付随する分析はこれらシナリオがどのように政治目標に寄与するのか、例えばロバストな知識ベースの維持や整備、イノベーションに優しい風土造りあるいは社会的に重要な課題への取り組みへの寄与ということである。プロジェクトチームはこれらのシナリオを様々なステークホルダーと協力して開発した。
フラウンホーファーISIでのプロジェクト・リーダーであるDr. Stephanie Daimerは、「欧州委員会、各国政府、大企業、EUに幅広く組織されている研究機構のような主要なステークホルダーだけでなく、まだそれほど強くはないだろうが、しかし非常に重要で、その重要性がますます増大すると思われる利益グループも取り込むことは重要であった。これに属するのは、大学、研究機関、個々の研究者、若手研究者、財団、さらにはクラウドファンディングプラットフォーム等である。」と強調した。
各シナリオ、
1. 第一のシナリオは「私的知識‐グローバル・マーケット」と呼称され、経済危機の影響がまだ強く感じられる研究圏を示している。ここでは研究が特に産業界、後援者や財団によって資金負担され、公的な研究助成は資金不足のため限られている。従って政治的な関係者(EU各機関を含む)は研究の優先事項にあまり影響をあたえることができない。その代りプライベートな関係者が研究界を支配することになる。2. 第二のシナリオ「社会的な重要課題―共同行動」では危機が予告され、欧州における生活水準が、例えばエネルギー供給の不安定化、軍事的紛争、気候変動の影響、あるいはパンデミックによって脅かされる。こうした危機に直面して欧州諸国が密接に協力する、例えば税制の調整により租税逃避を防止し、国庫を持続的に整備する。欧州各金融機関は研究に大きな影響力を持った基幹的存在となる:即ち社会的重要課題に取り組む広範な助成プログラムは若い研究者、特に助成研究者にも数多くのキャリア展望を開くことになる。
3. 第三のシナリオ「個々の解決策‐ローカルな思考」においては、政治的スキャンダルや政治家の財政危機克服に対処できない無能さによって政府に対する大きな不信が生ずる。科学は知識を取得するための方法に過ぎず、地域的な解決に集中する市民の高度の参加を伴う非常に不等質の研究グループが存在する。EUの主要課題は知識の配分のための必要なインフラを用意するというものになる。
4. 第四のシナリオは「危機の時‐舵を握る専門家」。ここでは気候的な大災害が持続性という方向への発想転換に繋がる。気候変動への適応は政治における支配的テーマとなり、科学は専門分野、世代を超越した協力を大きな特徴とし、解決策の作成及び実施において政治、社会面において中心的な役割を果たす。
VERAの結果は既に欧州委員会と全欧州各国政府の代表に紹介されており、いくつかの政府とは現在掘り下げた議論を行っている。その後のプレゼンテーションについては計画中。Dr. Daimerは「これらのシナリオでは、ERAの今後の進展が外部的な事象に左右される部分は僅である。重要なのは、政治と社会がどのように危機に反応し、今日既にどのような決定を下すか、ということである。例えば知的所有権、研究インフラ、財団法を規定する場合、それは実際に将来の方向づけを行う事実上の条件を創ることになる。VERAシナリオはそうした法規制の個別問題と各種の政治目標の間の関連を明らかにしており、求められる研究圏はどのようなものであるかという像を創り出すのに参考となるものである。加えて、それは様々な関係者が将来の研究圏の共同ビジョンについて理解しあう、そのプロセスを引き出すことにもなる」と明言した。
このプロジェクトはEUの第7次フレームワークプログラムによって助成されたものである。
今回のシナリオはディスカッションのたたき台としてまた決定の参考となるべきものである。 [DW編集局]