[本文]

国・地域名:
ロシア
元記事の言語:
英語
公開機関:
ロシア大統領府
元記事公開日:
2015/12/03
抄訳記事公開日:
2016/01/05

連邦議会に対する大統領年次教書演説

Presidential Address to the Federal Assembly

本文:

ロシア大統領府の2015年12月3日付標記発表では、連邦議会に対するプーチン大統領の年次教書演説の内容を伝えている。冒頭部分の大半がシリア問題に割かれ、その後に産業振興・支援策を中心とする経済政策のほか医療・福祉政策などについても述べている。以下は大統領演説の中から科学技術・イノベーションに関係する部分を抜粋して要約したものである。

● 「国家技術イニシアチブ」のその後
昨年(2014年12月4日)の大統領教書で今後15~20年を見据えた「国家技術イニシアチブ」の設置を発表したが、その実施作業がすでに進行中である。ロシアは革新的なアイデアを提供・実現できる強力なチームを多数擁している。中性子技術、無人飛行機・運航技術やロボティクス等無人輸送技術全般、エネルギーの蓄積・配送システムなどのいずれの領域でも、ロシアは今後数年以内に世界市場に向けてブレークスルーをもたらす機会を有している。

開発にあたる諸機関は、優先目標、まず第1に技術の近代化に向けた目標の達成に向けて取り組むべきである。そのような優先目標は20項目を超えるが、残念ながらその多くが「(達成不可能な)不良債権」化して見捨てられてきた。当然ながら、そのような目標を整理し、目標を実現するための事業の構造とメカニズムを効率化・最適化する必要がある。

経済を刷新するべく、国内に貯えられた投資ポテンシャルをもっと積極的に活用しなければならない。社債市場の発展に関して、中央銀行及び政府に対して提案を求めている。社債の発行・購入に関する手続きの簡素化が不可欠である。投資家や個人が国内の実業セクターの発展に投資して得をするように、このような債券のクーポン収入(インカムゲイン)の税控除を提案する。

工業、農業、輸送業、住宅建設業において主要プロジェクト数十件(主として民間プロジェクト)が実施中または開始準備段階にある。これらプロジェクトは、個別のセクターに建設的な効果をもたらすだけでなく、国土全体の包括的な発展を促進するものでもある。

これらプロジェクトが迅速かつ効果的に実施されるためには、時機を得た法改正、行政による障壁の除去、インフラ開発や外国市場への参入に対する支援が重要である。このような課題は往々にして一つの政府省庁の枠内にとどまらないため、最重要プロジェクト(複数)を支援する何らかのメカニズムの設置を提案する。ある特別な機構(a special agency)が当該支援を担うことになるだろう。

● 競争力のある製造業の分野拡大策
競争力のある製造業は現状では主に原料及び鉱業セクターに集中している。経済構造を変えることによってのみ、安全保障及び社会発展の分野でスケールの大きな課題を解決し、時代の要請に応えうる職場を作り出し、また何百万人もの生活の質・水準を向上させることができる。重要なことは、ロシアには実際、産業や農業分野、そして中小企業の中に業績のよい会社があるということである。我々の目標は、このような好業績企業の数を急速にかつすべての部門において増やすことである。この目標達成に向けて、輸入代替(import substitution)、輸出支援、製造業の技術革新及び高度技能人材の育成に関する各プログラムは実施されるべきである。

産業開発基金ではすでに輸入代替プログラムの支援を実施している。これらプログラムは起業家のニーズに適ったものである。来年(2016年)、当該基金に対し200億ルーブルの増資を行うことを提案する。

産業界からのイニシアチブにしたがって、各企業のエンジニアリング業務に必要な国内外の特許及びライセンス取得を支援する技術開発機構を設立することは妥当であると考えている。当然のことながら、外国市場に参入し、ロシア国産製品の(市場シェアの)拡大を図ることが、自国の企業、延いてはロシア経済全体の発展を見据えた戦略となるべきである。

農業分野では、農産物の生産・貯蔵・加工に関する自前の技術、ロシア独自の播種用等の種子の保存も必要とされている。しかし、この分野でロシアはまだ非常に弱い。主要な研究機関、ロシア科学アカデミー、また、すでに高度な開発を首尾よく進めているロシア企業が、当該分野の課題解決に参入してくれることを期待する。

[DW編集局]