[本文]

国・地域名:
EU
元記事の言語:
英語
公開機関:
欧州共同体研究開発情報サービス(CORDIS)
元記事公開日:
2013/05/22
抄訳記事公開日:
2013/06/28

アルツハイマー治療薬の大規模な治験が進行中

Major human drug trial underway for Alzheimer's

本文:

欧州共同体研究開発情報サービス(CORDIS)の2013年5月22日付のニュースで、標記の記事が掲載されている。以下にその概要をまとめる。
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現在、画期的な結果をもたらす可能性のある治験が進められているが、これは、高血圧症治療薬によってアルツハイマー型認知症の進行を遅らせる、もしくは食い止めることが可能かどうか判断することを狙いとしている。この治験はEUの資金供与を受けた最新の研究の一つで、「脳に関する欧州月間(European Month of the Brain)」をアピールするために公表される予定である。

18か月間にわたるこの大規模な研究はNILVAD(アルツハイマー型認知症におけるニルバジピン(Nilvadipine in Alzheimer’s Disease))と呼ばれており、第7次研究開発フレームワーク計画(FP7)から600万ユーロの資金が提供されている。5年間におよぶこのプロジェクトを国際的なレベルにまで引き上げたのは、ダブリン大学トリニティ・カレッジのBrian Lawlor教授である。研究対象として彼が関心を寄せているのは、アルツハイマー型認知症の早期発見、診断および治療、神経生物学、ならびに認知症および精神障害の行動症状と精神症状の治療である。

アルツハイマー型認知症は、認知症の中でも特によく見られる疾患で、記憶や思考、行動に障害を引き起こす。認知症は約100種類あるが、アルツハイマー型認知症が最も一般的で、認知症患者の62%が罹患している。アルツハイマー型認知症の患者は、世界では1,500万人超、欧州でも約500万人いると言われている。このため、社会において最も多額の医療費がかかる疾患の一つとされており、その金額は毎年4,400億ユーロを超える。

治験は、軽度から中程度のアルツハイマー型認知症を抱える50歳から90歳までの男女を対象に行われる。この治験が成功すれば、ニルバジピンによってアルツハイマー型認知症患者の治療が一歩前進する可能性があると期待されている。また、最も重要なのは、この神経変性疾患のために欧州で発生している医療費と社会医療費に対しても、今回の治験が大きな影響を及ぼすという点である。

[JSTパリ事務所]