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- 国・地域名:
- スイス
- 元記事の言語:
- 英語
- 公開機関:
- スイス国立科学財団(SNSF)
- 元記事公開日:
- 2016/03/11
- 抄訳記事公開日:
- 2016/04/15
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ソーシャルメディアは研究評価の「代替指標」になるか
- 本文:
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スイス国立科学財団(SNSF)の2016年3月11日付のニュースで、標記の記事が掲載されている。以下にその概要をまとめる。
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引用索引は疑問視されることが多く、研究成果の新たな指標として「代替指標」があれば、これが支持される可能性がある。人々は何十年にもわたり研究を評価してきたが、インパクトを表す値は、ほとんどが引用をもとにしている。だがこれらは、最初の引用が明らかになるまで数カ月、あるいは数年を要することもあり、評価に時間がかかることで知られている。ロンドンに拠点を置くAltmetric社は、2015年末に、上位100位までの出版物リストを含めた報告書を提出した。
Altmetric社の2014/15年の評価によると、スイスの論文ランキングは、人気の高いテーマにおける全般的な傾向を反映しており、生物医学分野が明らかに優勢で、物理学も上位にランクされている。他の研究分野はいずれも選外だった。分析では、2014年7月から2015年6月までの間に出版され、スイスの研究機関が少なくとも1つ参加している論文が対象とされた。
Altmetric社は、いわゆる代替指標(alternative metrics)、略して「オルトメトリクス」と呼ばれる指標の提供における第一人者で、社名もこれに由来している。同社は特にソーシャル・ネットワークに注目し、ダウンロードやツイート、フェイスブックへのエントリー、ブログへの投稿、メディア掲載などの数をカウントしている。オルトメトリクスは、研究論文の科学的・社会的な影響をより正確かつ包括的に評価できるとされ、また研究論文の発表についても、従来よりも迅速に実証できると言われている。
だが、オルトメトリクスはインパクトファクターや引用数といった既存の指標の代わりとなるだけでなく、近年は特に負担が増しているピアレビュー制度に対する救済措置にもなるという。情報科学者ジェイソン・プリーム(Jason Priem)が先導する「代替指標」運動の先駆者たちは、2010年のマニフェストの中で、「オルトメトリクスがあれば、ピアレビューをクラウドソーシングすることができる」と大胆な提案を行っている。このようなアプローチは、現在意見を求められている選ばれた一部の人々と比べ、はるかに多くの関係者が研究論文を目にする機会が生まれるという観点で興味深いとしている。
Altmetric社の責任者ユアン・アディー(Euan Adie)は、「現在科学出版物は、すでにブログなどで批判的討論の対象とされている。新しいシステムがあれば、基準に満たない研究をより的確に特定できるような体制が確立されるのではないか。」と話す。だが、「オルトメトリクスは、あくまでも引用分析やピアレビューを補うものであって、オルトメトリクスが実際に従来の方法に取って代われるかどうかは、今の段階ではわからない。」と付け加えている。
[JSTパリ事務所]