[本文]

国・地域名:
EU
元記事の言語:
英語
公開機関:
共同研究センター(JRC)
元記事公開日:
2016/05/03
抄訳記事公開日:
2016/06/02

研究システムの改善に向けて:資金供与とパフォーマンスに関する報告書を発表

Improving research systems: how to link funding and performance?

本文:

欧州委員会共同研究センター(JRC)の2016年5月3日付のニュースで、標記の記事が掲載されている。以下にその概要をまとめる。
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欧州委員会共同研究センター(JRC)が発表した新しい報告書によると、過去10年にわたり、研究成果をベースにした資金供与システム(research performance-based funding: RPBF)を採用してきた欧州諸国は、一貫して研究成果の質を向上させてきたことが明らかになった。ただ、資金供与と研究成果を結び付けるための単一の方法は存在しない、としている。

報告書は、国家当局が関連制度の試験的な実施を決定することができるよう、EU28カ国や選ばれた準加盟国、第三国にわたり異なるアプローチで分析を行っており、また、ファンディングメカニズムをデザイン、評価し、そして実施していく際に考慮するべき様々な問題について同定している。

報告書によれば、RPBFシステムは、高インパクトの科学出版物の発表数を増やすことに注力しているという。また、大学による特許取得、受託研究、博士号学位の取得者増加、学術界におけるジェンダーバランスの改善、国際化などにも貢献しうると述べている。

調査の結果から、RPBFシステムの実施を決定する際は、潜在的な利益を考慮の上でコスト算定しなければならないことを報告している。また、様々なインセンティブや指標、手法が及ぼす意図せぬ影響を考慮する重要性を指摘し、システムの効果および影響をモニターする必要があると助言している。さらに、指標の決定に際してはステークホルダーを関与させ、実施のタイミングを慎重に検討することも提言している。というのも、今後資金が支給される見込みがない場合、RPBFシステムの確立に対する組織的な抵抗もある程度予想されるからであるとしている。

このため報告書は、システムに対する抵抗感をなくし、戦略的・長期的な立案ができるよう、RPBFシステムの段階的な実施が良策ではないかと述べている。

研究成果の評価に関しては、ピアレビューまたはビブリオメトリクス(計量書誌学)のいずれかを用いている国もあれば、2つの方法を組み合わせている国もある。ステークホルダーはピアレビューの方を好むが、評価を実施する際のコストと適時性の欠如という制約が伴うとされる。

ビブリオメトリクスは、安価でおそらくはより「客観的」であるが、これを疑問視する学会の声もある。このため一部の資金供与システムでは、各々の方法の欠点を補うため、ピアレビューの際にビブリオメトリクスに基づく分析データを提供している。

今回の報告書は、ホライズン2020政策支援ファシリティ(Policy Support Facility)に従い、2016年に計画されている公的研究機関の業績ベース資金供与システムに関するMutual Learning Exercise(相互学習活動)にデータを提供することになっている。

[JSTパリ事務所]